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「背後の足音」 上・下 ヘニング・マンケル

見たり、読んだり、思ったり。

「背後の足音」 上・下 ヘニング・マンケル

「背後の足音」 上・下
著 者 ヘニング・マンケル
訳 者 柳沢由実子
発行所 創元推理文庫


 スウェーデンの作家ヘニング・マンケルのヴァランダー・シリーズ第七作目。

 ヴァランダー・シリーズを面白く感じるのは、事件解決の課程、いわゆる謎解きだけでなく、スウェーデン社会が内蔵する様々な課題、その真只中で苦悩する人々の生き様が臨場感あふれる筆致で描かれ、その姿に共鳴する読者としての自分自身を見出すことができるからに違いない。

 世紀末を実感させる時代のスウェーデン社会のやるせなさを、作者はストーリー展開の一環として、あるいは作中人物の独白として、いくたびも物語のなかに散りばめる。

 そんな箇所をいくつか挙げてみると、

 犯罪が割に合うことかどうかは議論の余地があるところだ。そもそも犯罪が割に合うかどうかなどということがいつから議論されるようになったのかはさだかではない。が、彼はかなり前からスウェーデンの犯罪率はかつてないほど上がっているという実感をもっている。巧みな経済犯罪を犯す者たちは、いまではほとんど捕まえることができないフリーゾーンにいると言っていい。そこでは法治国家という概念は完全に死滅している。(上巻42~43ページ)

「いったいこの国はどうなっていくんでしょう?」(上巻78ページ)

「スウェーデンは情け容赦のない国になった。非情で残酷な国だ」(上巻197ページ)

 イースタ警察署に一人の若者の母親から、娘を捜してくれという訴えがあった。夏至前夜(ミッドサマー・イヴ)に友人と出かけて以来、行方がわからないという。旅先から絵はがきが送られてきたのだが、偽物らしい。

 ヴァランダーは捜査会議を招集するが、刑事のひとりスヴェードベリが無断で欠席した。几帳面な彼がなぜ? 不審に思って彼のアパートを訪ねたヴァランダーの目の前には、信じられない光景が広がっていた。

 スヴェードベリ殺しの捜査を開始するやいなや、奇怪な殺人事件が続けて発生する。ぜんぶで八人の被害者。

 本作品がスウェーデンで刊行されたのは1997年だが、現代は、なんらかの不満や鬱憤の爆発による無差別殺人が世界中で起こされている時代。日本もまた例外ではない。この混迷の時代、現代を生きる人間として如何にあるべきか、登場人物とともに、そのことについての思索を深めることができる。

訳者あとがき

解説 総合芸術としての警察小説――ヘニング・マンケル再考――
                  小山 正(ミステリ研究家)

2011年7月22日 初版



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きどのひつじ

Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

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