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「目くらましの道」 上・下 ヘニング・マンケル

「目くらましの道」 上・下
著 者 ヘニング・マンケル
訳 者 柳沢由実子
発行所 創元推理文庫


 刑事クルト・ヴァランダーが活躍するスウェーデンの警察小説シリーズの第五弾。

目 次
ドミニカ共和国 一九七八年
スコーネ 一九九四年六月二十一日から二十四日
スコーネ 一九九四年六月二十五日から二十八日
スコーネ 一九九四年六月二十九日から七月四日
スコーネ 一九九四年七月五日から七月八日
スコーネ 一九九四年九月十六日から十七日
 解 説              杉江松恋

 「ドミニカ共和国 一九七八年」はプロローグ。

 ペドロ・サンタナが初めてドロレスに会ったのは二十一歳のときだった。二年後に二人は結婚し、結婚して九年目に彼らは女の子を授かった。やっと子どもが生まれたと思ったのもつかの間、ドロレスは病気で亡くなってしまう。

 娘に洗礼を受けさせるためにペドロは町へ行った。ドロレス・マリア・サンタナと名づけられ、父親に深く愛された娘はこのとき八ヵ月。一九七八年五月八日のことだった。

 スウェーデンを舞台とした小説ながら、ドミニカ共和国に生まれた貧しい家族の物語から始められる。

 一転して「スコーネ 一九九四年六月二十一日から二十四日」の冒頭。

 立場を異にする者、それぞれ個別の情景。男の斧の刃が肩甲骨の下に当たり、背骨を真っ二つにしたその瞬間に七十歳を越えていた男は死んだ。死んだ男の額が切り裂かれ、頭のてっぺんの頭皮が毛髪ごと根こそぎ剥ぎ取られた。

 通報を受けて向かった菜の花畑、ヴァランダーの眼前で少女がガソリンをかぶり焼身自殺を遂げた。目の前で少女が燃えるのを見たショックに追い打ちをかけるように、事件発生の通報が入った。

 斧で殺害し、髪の毛ごと頭皮を剥ぐ殺人。犠牲者は、元法務大臣、画商、盗品の売人。殺害方法はしだいにエスカレートし、三人目は生きているうちに両目を塩酸で焼かれていた。そして四人目の犠牲者が現れる。

 一方、菜の花畑で焼身自殺した少女は、ドミニカ共和国で失踪人として届けられていた。

 本書がスウェーデンで刊行されたのは1995年。

 人身売買、DVなど、その後の日本でも表面化する社会病理の実相と、一人で暮らす親の介護という普遍的な課題に触れることができる。

  杉江松恋の「解説」によると、ヘニング・マンケルは1990年に書いた『少年のはるかな海』でニルス・ホルゲルソン賞を、1995年に発表した『炎の秘密』でアストリッド・リンドグレーン賞を受賞しているという。

 『少年のはるかな海』はヨエルという少年が成長への不安にもがく小説であり、彼が人生の答えを求めて苦悩するさまは、どこかクルト・ヴァランダーと重なって見える、というからにはこの作品もまた読まねばなるまい。

2007年2月16日 初版



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きどのひつじ

Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

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