藤沢周平 「喜多川歌麿女絵草紙」

見たり、読んだり、思ったり。

藤沢周平 「喜多川歌麿女絵草紙」

「喜多川歌麿女絵草紙」
著 者 藤沢周平 (ふじさわ しゅうへい)
発行所 文春文庫


 浮世絵師喜多川歌麿が主人公の連作6篇を収める。

「さくら花散る」
 おこんは亭主持ちだった。病気で寝ているが、女房が歌麿に絵を描いてもらうことを喜んでいるという。

「梅雨降る町で」
 おくらは早く身を固めたがっていた。おくらと所帯を持ちたいという男は沢山いた。そういうつき合いが出来ると、おくらはいい人が見つかった、と大騒ぎするのだが、不思議なほど長続きはしなかった。

「蜩の朝」
 「おい、ちょっと」。歌麿はお糸を探しているという男にいきなり乱暴な声をかけられた。男の身なりは悪くはなかった。歳のころは二十七、八。眼つきが鋭いところをのぞけば、商家の手代といっても通りそうな男だった。

「赤い鱗雲」
 湯島天神の境内ではじめて会ったとき、茶屋の中で、人眼もはばからず泣いていたお品は、やがて日が翳ると立ち上がった。打ちひしがれたような後ろ姿を見送っているうちに、歌麿はどうにかして、その女を絵にしてみたい衝動に駆りたてられて、後をつけた。

「霧にひとり」
 酒をつぎながら、自分からは何も口をはさもうとしないおさとは、ひどく無口な感じがした。黒眸の大きい少し下ぶくれの顔は、可愛い感じはしても、女の稔りにはほど遠い稚い感じが残っているのだが、おさとがみせた盃のあけっぷりは、一瞬なまめかしく歌麿の眼をひきつけた。

「夜に凍えて」
 歌麿は常盤町裏の迷路のような小路に入り込んで行った。歌麿が六年前の天明八年、艶本「歌まくら」を描いたとき、女はまだ十五の少女だった。どんな微細な陰も、手にとるように記憶に刻まれている。

 あとがき
 解説 蓬田やすひろ

2012年7月10日 新装版第1刷

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[ 2018/06/18 20:00 ] 国内の作家の本 藤沢周平 | TB(-) | CM(0)
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散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

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