藤沢周平 「夜の橋」

見たり、読んだり、思ったり。

藤沢周平 「夜の橋」

「夜の橋」
著 者 藤沢周平 (ふじさわ しゅうへい)
発行所 文春文庫


 昭和50年代初頭に発表された9篇を収める。

「鬼気」 初出「小説宝石」昭和50年10月号

 今年もまた秋の祭祀のあとに行われる紅白試合で勝ちを得た平野作之丞、徳丸弥一郎、鳶田勇蔵は三日ほど経ってから酒の席を設けた。自ずから話題は藩内の剣の達人についての噂へと移っていった。隠れた剣の名手として名前をあげられたのは細谷久太夫。三人は真偽のほどを確かめることにした。

「夜の橋」 初出「週刊小説」昭和51年1月30日号

 博打に溺れたせいで別れることになったおきくが訪ねてきたという。再婚話の相談で、自分には関係ないと突き放した民次だったが、相手がまぎれもないやくざ者と分かるや、危険を顧みず止めに出た。

「裏切り」 初出「小説現代」昭和52年6月号

 いい女房をもらった、と日ごろ思っていた幸吉だったが、仕事を終え家に戻って戸を開けると、中からあたたかい空気がむっと顔を包んできた。おつやが戻っていない。おつやが働いている水茶屋へ迎えに行ってみると、今日は休んでいるという。それどころか、時々休んでいたという。

「一夢の敗北」 初出「小説新潮」昭和52年10月号

 吉田次左衛門一夢は、米沢藩内で一刀流の達人として知られていた。宝暦十一年の十一月十四日、一夢は糠ノ目の御役屋を出て、米沢城下に戻る道を歩いていた。時刻は申ノ刻(午後四時)を過ぎて、あたりは薄暗くなりかけていた。小一里も来たころ、道をふさいで立っている者がいる。

「冬の足音」 初出「別冊小説宝石」昭和52年冬季号

 叔母のおよしが来たようだ。お市は一度ならず二度までも、およしが持ってきた縁談をことわっている。父親の兼蔵の一番弟子だった時次郎が出て行ったのは三年前。時次郎には、去年の暮に、両国橋の上でばったり会って、そのときに働いている場所も聞いている。「一度、あのひとに会ってみよう」お市は不意にそう思った。

「梅薫る」 初出「問題小説」昭和53年4月号

 馬廻組に勤めている保科節蔵の妻志津は奥津兵左衛門の娘である。志津は、時どきふっとわけもなく実家にもどって来る。そういうとき、志津が何を考えているか兵左衛門も妻の波江もわからないではないが、やはりわがままと思うしかない。志津には、以前婚約のさだまった相手がいた。ある事情からその婚約は破棄されたのだが、その事情を知っている者はごく少数。志津には知らされていない。

「孫十の逆襲」 初出「小説現代」昭和53年5月号

 柴を背負った孫十はすべらないようにそろそろと杣道を降りた。この間まで、六束ぐらいなら重いとも思わず背負ったものだが、孫十がいま背負っているのは三束である。孫十が山から帰ったらすぐ、よこしてくれと、村の世話役を勤めている仙右衛門が二度も使いをよこしたという。美濃から山越えして来たと思われる野伏せりの一団が、谷奥の村を襲い、喰い物をうばい住みついたという。

「泣くな、けい」 初出「小説現代」昭和53年8月号

 相良家の婿、波十郎は御納戸奉行助役の間坂惣兵衛と二人で、御物蔵の中の藩主家の宝物を納めている部屋を調べていた。桐箱に納めてあるはずの短刀がない。前回の下見のとき、奉行から研ぎに出せと言われた波十郎が預かって帰り、城下で一番と言われる刀剣研師孫三郎に研がせ、終ってから奉行に返したはずなのだが。あの時、波十郎は藩の公用で隣国へ出かけようとしていたので、死んだ妻、麻乃に指図して家を出たことを思い出した。波十郎は相良家に来て三年になる奉公人のおけいに、そのときの様子をたずねた。

「暗い鏡」 初出「小説現代」昭和53年11月号

 鏡研ぎ職人政五郎の弟の子おきみは二十七になっているはずだった。おきみの両親は彼女が十五の時にはやり病いでつづけざまに亡くなっている。そのあと一年ほど、引き取られて政五郎の家で暮らしたが、やがて奉公先が見つかって出て行った。兄弟はなく、ひとりだった。暑い夏がやっと峠をこえて、朝夕秋風が立つようになった八月はじめのある朝、政五郎の家を岡っ引がたずねてきた。昨夜、おきみが殺されたという。

あとがき

解説 宇江佐真理

2011年7月10日 第1刷

スポンサーサイト
[ 2018/06/09 16:00 ] 国内の作家の本 藤沢周平 | TB(-) | CM(0)
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
スポンサードリンク
スポンサードリンク
スポンサードリンク
Amazon
プロフィール

きどのひつじ

Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
QRコード
QR
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ