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藤沢周平 「藤沢周平句集」

見たり、読んだり、思ったり。

藤沢周平 「藤沢周平句集」

「藤沢周平句集」
著 者 藤沢周平 (ふじさわ しゅうへい)
発行所 文春文庫


 本書が単行本として発刊されたのは1993年3月だが、文庫化にあたり〈「馬酔木」より〉と〈「俳句手帳」より〉に示した俳句を追加したという。

 興味を持ったのは〈「俳句手帳」より〉の俳句。

 その箇所の前書きを抜き出すと、

 角川書店が発行していた、俳句を記すための欄をもつ「俳句手帳」の昭和53年版に、30句が並べて書かれていた。作家になってからの句作と推定されるが、確証はない。(106ページ)

 私が角川書店発行の「俳句」を読んでいた頃、「俳句手帳」は雑誌「俳句」新年号の付録として添付されていたので〈「俳句手帳」より〉の俳句は昭和53年以降の俳句と思われる。

 藤沢周平の作品が書かれた時期を調べてみると、小説「一茶」を「別冊文藝春秋」に連載したのは昭和52年春から一年間。

 俳句の季語をタイトルに据えた掌篇「江戸おんな絵姿十二景」を「文藝春秋」に連載したのが昭和56年3月号から昭和57年2月号にかけて。

 「江戸おんな絵姿十二景」では季語の本意を活かした俳句的手法が遺憾なく発揮されていると思ったのだが、そういうことだったのか。

 〈「俳句手帳」より〉の俳句は藤沢周平がひとつの季語でいくつか作った俳句を推敲した最終推敲だったと思われる。

 例えば、「雪女」

雪女風寒き夜は泣きにけり

雪女去りししじまの村いくつ

雪おんな去りて静まる夜の村

雪女去れば灯もどる村いくつ

 例えば、「黄菊」

曇り日の一隅光る黄菊かな

曇り日の一日黄菊光おり

曇り日のされど黄菊の光かな

曇り日のされど黄菊の黄の光

曇り日にされど黄菊の群光る

曇天に暮れ残りたる黄菊かな

曇天の黄菊の光暮れ残る

 ひとつの季語から見えてくる景色をいくつも書きとめることは、俳句に造詣のある者なら誰もが行っていること、藤沢周平もまた然り。

 小説「一茶」を執筆するにあたって再び俳句に取り組み、その後も人知れず継続して俳句に取り組み続け、その成果が「江戸おんな絵姿十二景」として結実したのではないだろうか。

 「江戸おんな絵姿十二景」は冗長な表現を排除した俳句的作品である。簡潔な表現で視覚、触角、聴覚を刺激する。

 〈「俳句手帳」より〉の俳句から藤沢周平の作品の執筆過程の一端を知ることができる。まだ発掘されていないだけであって、このころ藤沢周平が作った俳句作品がどこかに埋もれているのかもしれない。

 藤沢周平が作った「雪女」と「黄菊」の句からそれぞれ一句だけ選ぶとすれば、

雪おんな去りて静まる夜の村

曇天に暮れ残りたる黄菊かな


  目 次

 「海坂」、節のことなど
「海坂」より
「のびどめ」より
拾遺
「馬酔木」より
「俳句手帳」より
随筆九篇

 小説「一茶」の背景
 一茶とその妻たち
 心に残る秀句
 稀有の俳句世界
 青春と成熟――鑑賞・森澄雄の風景
 初冬の鶴岡
 初夏の庭
 晩秋の光景
 日日片片

解説     清水房雄
文庫解説   湯川 豊

2017年9月10日 第1刷

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[ 2018/05/07 10:00 ] 国内の作家の本 藤沢周平 | TB(-) | CM(0)
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きどのひつじ

Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

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