FC2ブログ

樋口明雄 「標高二八〇〇米」

見たり、読んだり、思ったり。

樋口明雄 「標高二八〇〇米」

「標高二八〇〇米」
著 者 樋口明雄 (ひぐち あきお)
発行所 徳間文庫


 怪異譚8篇。

「モーレン小屋」
 三月のツアーガイド付き登山「立山縦走ツアー・避難小屋泊まり二泊三日健脚向きコース」の参加者は五人。たったひとりの山岳ガイドは雪庇を踏み抜いた客のひとりを助けようとして転落。山岳ガイドを失った一行は絶望の中でひたすら歩き続けた。そんな矢先、彼らが遭遇したのが単独行の登山者、間宮恵介だった。

「屍山」
 二十年間、赤石山脈で猟をしてきた小塚八重吉。確実に急所に命中したはずの獲物、凛々しい角を持つ大きな牡鹿はなだらかにせり上がる斜面に点々と赤い痕を残しながら丘の向こうに消えていった。「あれは・・・・・鹿でねえ」。八重吉が家に戻ると身重の妻が高熱を発して幽明の境を流離っていた。

「渓にて」
 「おそらく今日が最後の一日」。その朝、鳥の声で目を覚ました久住耕介は宗方幹也といっしょに渓を遡行しながら釣りをした。

「霧が晴れたら」
 高嶋光彦は鎖場で足を滑らせ、ゴツゴツした岩場に、まともに背中から落ちて、後頭部を強打した。これで死ぬのだろうと思ったのだが、何気なく上体を起こすと、ひょいという感じで上半身が持ち上がった。

「標高二八〇〇米」
 標高3193メートルの北岳山頂で小学五年の息子、涼とふたり、早めの昼食を食べ終えた滝川康平は息子に下山の準備をいおうとした。「どうした? 気分でも悪いのか」「ちょっと頭が痛い」高山病の兆候かもしれない。早めの下山を決意した滝川だが、途中で立ち寄った山小屋には誰ひとりとしていなかった。

「闇の底より」
 JR上越線の土合駅で下車したぼくは、竿を振って毛鉤を飛ばしながら、湯檜曽川の渓を遡行し始めた。

「最終電車」
 交通事故で妻子を失った里見正彦は自分の居るべき場所をなくしてしまった。最終電車に乗るため地下街を歩いていた彼が行き着いた先の切符売り場と改札口。看板に書かれていたのは『国鉄線 八重洲中央入口 きっぷうりば』。

「夜よりも暗い影」
 《新井東住宅》A棟14階に住む長坂冬樹が煙草を吸う場所は部屋の外、猫の額ほどにも狭いベランダ。芝生が植えられた緑地帯を挟んだ真向かいにB棟の建物があった。B棟11階の左から二番目の部屋の住人は若い娘だった。

「リセット」
 「標高二八〇〇米」の続編。
 標高二八〇〇メートルを境として、その高度よりも高い場所にいた者だけが消滅を逃れ、下界には誰ひとりとしていなくなっていた。

 解説は、千街晶之。

2013年7月15日 初版

スポンサーサイト
[ 2018/04/23 22:00 ] 国内の作家の本 樋口明雄 | TB(-) | CM(0)
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
スポンサードリンク
スポンサードリンク
スポンサードリンク
Amazon
プロフィール

きどのひつじ

Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
QRコード
QR
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ