樋口明雄 「ブロッケンの悪魔 南アルプス山岳救助隊K-9」

「ブロッケンの悪魔 南アルプス山岳救助隊K-9」
著 者 樋口明雄 (ひぐち あきお)
発行所 角川春樹事務所


 「南アルプス山岳救助隊K-9」シリーズ。

 大型台風が日本列島を直撃する前日、広河原に至る主要林道三箇所を爆破した、鷲尾一哲をリーダーとするテロリスト集団は北岳山荘を制圧、インターネット経由で日本国首相田辺康造に声明を発信した。


・・・・・
 去る九月二日、陸上自衛隊大宮駐屯地内、化学学校より強奪したVXガス、およそ二ガロンがわれわれの手中にあり、首都圏でこのガスを広域に空中散布する手段を保有している。
・・・・・
 発射を実行すれば、予想される死者、重傷者の数は十万単位となり、東京は文字通り壊滅し、経済的打撃もはかりしれない。
 これを防ぐためには、われわれが用意した五つの要求を、日本国政府が受諾する必要がある。
 一、平成五年五月、国際連合平和維持活動における第二次カンボジア派遣部隊の活動における情報収集班のパトロール中、同月二十二日、タケオ州トラムコック地区においてポル・ポト派ゲリラによる襲撃を受け、北部方面隊第三施設団所属の、中山大典二等陸曹、大津道昭三等陸曹、および和泉淳一二等陸士の三名が戦死した事実を公式に明らかにすること。
 二、平成二十三年三月、東日本大震災による福島第一原子力発電所事故の際、所員二名の救助のために三号機建屋内部に入り、爆発に巻き込まれて死亡、遺体の回収もなされなかった第一〇四特殊武器防護隊の大谷正也二等陸尉、河本純也三等陸尉、ならびに鷲尾俊介三等陸曹の殉職を公式に明らかにすること。
・・・・・


 「PKO日報隠蔽」「加計文書総理のご意向」「働き方改革不適切データ」「森友公文書改竄」など主権者である国民を欺く政治が行われている日本で起こりうる現実的なテーマで構築されたバイオレンス-ノベル。

 小説と言いながら、テロリストのリーダー鷲尾一哲が物語のなかで話す会話文に真実が込められている。

「政治家がいかに防衛の必要性を語り、集団的自衛権による抑止力を国民に押しつけようとしても、戦地にゆくのはわれわれ自衛隊員であって、けっして彼らではない。政治家は国会の席で居眠りをし、好き勝手に野次を飛ばし、料亭で飽食し、ゴルフにうつつを抜かす。そんな連中が勝手に始めた戦争に、国を守るという責任を背負った自衛隊員たちが参加させられ、戦場で若い命を散らしていく。それでいて誰ひとりとして、その責任をとらない」

 現実の日本の政治状況そのものではないか。

 息もつかせぬ展開。最終ページを読み終えて、ようやくホッとすることができる、あっという間の総ページ数483ページの大作。文字による映像表現の極み。

2016年2月8日 第1刷発行

スポンサーサイト
[ 2018/03/18 17:00 ] 国内の作家の本 樋口明雄 | TB(-) | CM(-)
スポンサードリンク
スポンサードリンク
スポンサードリンク
Amazon
プロフィール

きどのひつじ

Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
QRコード
QR
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ