澤田瞳子 「腐れ梅」

見たり、読んだり、思ったり。

澤田瞳子 「腐れ梅」

「腐れ梅」
著 者 澤田瞳子(さわだとうこ)
発行所 集英社


 このタイトルでは梅が腐ってどうかしたのかということしか想像できないが、物語の内容は謂わば北野天神縁起異聞。主人公は似非巫女(えせみこ)を生業とする綾児(あやこ)。禁厭札(まじないふだ)も売れば憑坐(よりまし)も務める。頼まれれば色も売る。

 ときは平安時代中ごろ、平将門の乱、藤原純友の乱直後の世の中。右京七条二坊十三町に住む綾児のもとに同業の阿鳥が話を持ち込んだ。「あたしと組んで、菅原道真を祀る社を造らないか」。物語は波乱万丈の展開。

 本書巻末にはその道の専門家、学者しか読まないような天神信仰に関する専門書が主要参考文献として挙げられる。それらの文献を読みこなしたうえで書かれた本書。時代考証は的確。時代の骨格は事実としてもストーリーは著者による虚構。巻末に「この物語はフィクションであり、実在する個人・団体とはいっさい関係がありません。」と書かれてはいるものの、真実かもしれないと錯覚させられてしまう。壮大なスケールで描かれた一人の女の時代絵巻。

 物語の発端、開巻第一行目が、
「―――ほとがかゆい。」

 物語を締めくくる最終行もまた、
「―――ほとが、かゆい。」

 この物語、「ほと」で始まり「ほと」で締めくくられる。最終行の「ほと」につけられた読点。意味深長な読点。この読点を深読みすれば、ここには起死回生を誓った綾児の情念が込められていることが分かる。「見ているがいい。いずれ自分はこの床から起き直り、再び美しく装って立ち上がってやる。そのときになって驚くのは、あいつらの方だ」という綾児の独白が、読点一つで強調されました。

2017年7月10日 第1刷発行

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[ 2018/01/01 00:00 ] 国内の作家の本 澤田瞳子 | TB(-) | CM(-)
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Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

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