桜木紫乃 「氷の轍」

見たり、読んだり、思ったり。

桜木紫乃 「氷の轍」

「氷の轍」
著 者 桜木紫乃
発行所 小学館


 善意という名のおせっかい。それが善意であると信じ込んだ者には、そのことが相手方にとって余計なおせっかいどころか、どれほど迷惑なことであるか、ということに気づくことはない。

 今年三十歳になる北海道警釧路方面本部刑事課強行犯係、大門真由。彼女は表向きは養女だが、父親は実父で血の繋がりのない母親だけが他人だった。

 千代ノ浦マリンパークの消波ブロックの隙間で発見された男性の遺体。推定年齢は七十代から八十代。半袖シャツ、長ズボン、メッシュの革靴、着衣に乱れなし。身元を示す所持品、遺留品なし。直接の死因は頭蓋骨陥没。遺体の損傷、大。目撃情報なし。死後、一日から二日。

 被害者の自宅に残されていた手がかりの一つが、北原白秋『白金之獨樂』。

  他ト我    北原白秋

 二人デ居タレドマダ淋シ、
 一人ニナツタラナホ淋シ、
 シンジツ二人ハ遣瀬ナシ、
 シンジツ一人ハ堪ヘガタシ。

 被害者を巡る昭和三十年代の状況と近況に真由の心象風景を絡ませながら進行する物語。読み始めるや否や最後まで一気に読ませてしまうスピード感。読後、上質なミステリーを読み終えたという充足感に満たされた。

2016年10月2日 初版第1刷発行

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[ 2017/12/12 21:00 ] 国内の作家の本 桜木紫乃 | TB(-) | CM(-)
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散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

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