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宮本 輝 「螢川・泥の河」

見たり、読んだり、思ったり。

宮本 輝 「螢川・泥の河」

「螢川・泥の河」
著 者 宮本 輝(みやもと てる)
発行所 新潮文庫


 北陸の小都市で生まれ育ち、関西の大学への進学をきっかけに、定住の地を大阪に定めることとなった私にとって、「螢川」の舞台・富山、「泥の河」の舞台・大阪、両方とも馴染み深く、そしてまた懐かしい場所である。

 「螢川」の時代背景は昭和37年の富山。

 当時の私は小学校2年生に進級した頃。今でこそ融雪道路が縦横に走り、冬の積雪を迎えても、雪道に対する不安を感じることなく一定の速度で車を運転できるようになったものの、当時の富山のようすは、

 一年を終えると、あたかも冬こそがすべてであったように思われる。土が残雪であり、水が残雪であり、草が残雪であり、さらには光までが残雪の余韻だった。春があっても、夏があっても、そこには絶えず冬の胞子がひそんでいて、この裏日本特有の香気を年中重く澱ませていた。(100ページ)

 なかでも冬の富山は、降雪の日が続けば幾日も曇天の日々。日の目を見ることのない暗鬱な裏日本の気候そのものであった。だからこそ大量の螢を育むことができたのかもしれない。

 「泥の河」の時代背景は昭和30年の大阪。

 昭和30年といえば私が生まれた年。そんな私が関西の大学に進学したのは昭和48年。関西で迎えた初めての冬。雪が降って初めて冬の訪れを感じていた私にとって、いつまで経っても雪の降らない大阪は冬の来ない土地であった。

 冬の降雪をほとんど見ない大阪。冬といえば、曇天の空から大量の雪が降りしきる富山しか知らない私にとって、晴天の日が続く大阪は気候風土の違いという事実を超えて、気持ちのうえでも私の魂に明るさをもたらしていったような気がする。

1994年12月1日 発行

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[ 2017/10/21 04:00 ] 国内の作家の本 宮本輝 | TB(-) | CM(-)
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きどのひつじ

Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

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