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岸 政彦 「ビニール傘」

見たり、読んだり、思ったり。

岸 政彦 「ビニール傘」

「ビニール傘」
著 者 岸 政彦(きし まさひこ)
発行所 新潮社


 「ビニール傘」と「背中の月」の二本立て。

「ビニール傘」

1.語り手は男。
(1) 俺、タクシーの運ちゃん。若い女を拾う。突然、女がすすり泣き。
(2) 俺、清掃作業員。タクシーが出て来たので立ち止まる。さっきまで泣いていたように見える女と目があう。
(3) 俺、コンビニの店員。レンジで温めた弁当を女に渡す。女の生活に想像を深め、場面は一気に転じて俺の日曜日。女との出会い。
(4)(3)の俺と女との生活、そして別れ。

2.語り手は女。
 女が和歌山の専門学校を出て大阪へ。いろいろとあった後、帰郷。

 第156回芥川賞候補作。展開的にマニアックな内容。俺の主体が連想的に変幻変化し、女と生活する俺に焦点が合わされていく。そして、別離後の女の独白。万人に理解してもらおうという気のサラサラ感じられない小説。面白い試み。これが芥川賞好みの作品か。

「背中の月」

 語り手は俺。
 十年間一緒に暮らした妻の突然の死。すでに妻はいないのだが、俺はその日に目にした様ざまなものを妻の携帯に送り続けている。そんな俺にとって最も気になる存在が、環状線の電車から見える、急速に崩壊していく廃屋。ある日の早朝、出勤した俺は辞職願を提出。その帰りしな、廃屋が更地になっているのを見た俺は、帰宅後、楽な服装に着替え鍵をかけて家を出た。

 「俺は鍵をそのドアポケットに放り込んだ。」「これでこのドアはもう開けることができなくなった。やっと俺たちは二人きりになった。」(121ページ)

 再生の書と読むか、死出の道行きと読むか、最後の読みは読者に委ねられた。

2017年1月30日 発行

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[ 2017/09/06 16:00 ] 国内の作家の本 岸政彦 | TB(-) | CM(-)
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きどのひつじ

Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

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