光田和伸 「芭蕉めざめる」

見たり、読んだり、思ったり。

光田和伸 「芭蕉めざめる」

「芭蕉めざめる」
著 者 光田和伸(みつた かずのぶ)
発行所 青草書房


 「芭蕉は幕府隠密だった」なんてヨタ話だ、とかたく信じていたにもかかわらず、「芭蕉は幕府隠密だった」と考える日本で最初の芭蕉専門家になってしまった著者による芭蕉論。

 芭蕉はどうして隠密になってしまったのか。三十代の末に起きた出来事。その出来事をきっかけとして隠密になるということが起きなければ、芭蕉は文学史に名前を残すような存在にはならなかっただろう。

 本書には、「生きる。そして、自分の人生を実現する。そのことをめぐる運命と不思議について考える一つのきっかけと」なればという著者の意図もまた込められている。

 後世、『奥の細道』の旅と呼ばれることになる東北地方への芭蕉の一大旅行は、どのような手順で準備されていったのか。芭蕉研究者の誰かが調べて、発表していいことのはずなのに、どれだけ探しても著者を納得させてくれるような文献がなかった

 そこで著者が注目したのが「俳諧の連衆」連句の参加者、芭蕉が『更科紀行』の旅から帰って来た後、『奥の細道』に旅立つまでの間に開かれた連句会の参加者だった。なかでも、冬(元禄元年十月~十二月)、春(元禄二年正月~三月)の参加者の顔ぶれとその違いに注目した。春の参加者の全員が美濃国大垣藩の武士。

 『奥の細道』の旅での芭蕉の同伴候補者、路通と曽良がはじめて参加したのは元禄元年十月初冬の一夜に開かれた「其かたち」歌仙。いよいよ『奥の細道』プロジェクトが動き始めた。

 芭蕉を学ぶための格好の書。
 芭蕉の生き様だけでなく、芭蕉の俳諧について、その骨子をも学ぶことができる。

 後世「蕉門の十哲」と呼ばれる一人になった森川許六は『阿羅野』に収録された「厂(かり)がねもしづかに聞けばからびずや」の歌仙を読んで驚嘆した。この歌仙には、芭蕉中期の『猿蓑』の世界、最晩年の『炭俵』の軽みの世界、すべてが先取りされていると褒めている。

 全241ページ。
 ミステリー感覚で読むことができる本格的芭蕉論。

目次
第1章 夜の人々
第2章 「みちのく」という夢
第3章 最初の挫折、そして江戸へ
第4章 江戸の「客」筋
第5章 寿貞 芭蕉の妾
第6章 暗転した運命 深川元番所
第7章 傑物 仏頂
第8章 『奥の細道』出発の謎
第9章 田植えの白河関
第10章 象潟に来た謎の男
第11章 『奥の細道』屈指の名作
第12章 旅の終わりに
第13章 時雨の峠
あとがき
芭蕉年譜
『奥の細道』出発直前一座連衆名一覧表

2008年12月10日 第1刷発行

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[ 2017/09/01 20:00 ] 俳論・俳文・句集など 光田和伸 | TB(-) | CM(-)
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散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

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