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別所真紀子 「芭蕉経帷子」

見たり、読んだり、思ったり。

別所真紀子 「芭蕉経帷子」

「芭蕉経帷子」
著 者 別所真紀子(べっしょ まきこ)
発行所 新人物往来社


 経帷子(きょうかたびら)とは、死者を葬るとき死者に着せる着物。

 芭蕉終焉の後、亡骸は彼の門弟たちにより淀川を遡行して義仲寺へ運ばれた。本書では、芭蕉の死という状況を核として、芭蕉の弟子のひとり乙州とその妻れんの夫婦の在りようと心の動きが描かれます。

 芭蕉に師事しながらも家業に勤しむ乙州。平素は仕事上の忙しさのなかで、れんの働きぶりについても、妻なれば嫁なればそれが当然という形でれんに接し、どんなに忙しそうにしていても労いの声がけをすることもなかったのだが、芭蕉の死をきっかけとして深められる夫婦の情愛が丁寧な筆致で描かれます。

 云わば乙州とれんを物語の中心に据え、ストーリーテラーとすることによって、芭蕉終焉に及んでの芭蕉を巡るあれやこれや、芭蕉の人となり、門弟同士の確執などが様ざまなエピソードとして描かれます。何よりも特筆できる本書の白眉は、時宜を得た蕉門の発句と連句。俳諧に造詣の深い著者ならではのものと言えます。

 江戸時代と言えば、身分の違いに重きが置かれた時代。ところが連衆として俳諧の座に列したならば、そのような身分の違いを超えて、あるいは、身分の違いなど意識することなく同士として対等に接しているようすをも知ることができる。これもまた通夜葬儀七日の法事を主要な舞台として設定したからこそ際立ったのかもしれない。

2002年10月30日 第1刷発行

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[ 2017/08/17 21:00 ] 国内の作家の本 別所真紀子 | TB(-) | CM(-)
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きどのひつじ

Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

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