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別所真紀子 「詩あきんど 其角」

見たり、読んだり、思ったり。

別所真紀子 「詩あきんど 其角」

「詩あきんど 其角」
著 者 別所真紀子(べっしょ まきこ)
発行所 幻戯書房


 表紙絵は、岩佐源兵衛勝重「群鶴図」。岩佐といえば、「奇想の系譜」岩佐又兵衛。又兵衛と似た名前の人物がいたもんじゃ、又兵衛との関係はと、「装画について」書かれている箇所を読むと、「岩佐源兵衛勝重は江戸初期の画人で、岩佐又兵衛の嫡男として生まれる」記載されている。

 源兵衛勝重は又兵衛の息子だったのか。父・又兵衛とは違った才能を発揮したようだと思いつつ、ページを捲ると、これまたゴージャスなことに、其角直筆の短冊が二枚載せられている。

傾廓 時鳥あかつき傘を買せけり  キ角
小坊主や松にかくれて山ざくら  其角

 そして其角の肖像画は、富士山上行寺蔵の其角像。

 本文以前の段階で何ともゴージャスな口絵ページ。

 世間が芭蕉芭蕉と芭蕉に傾注するなか、著者が筆に任せたて記したのは、その弟子にして世にも稀なる才能、稀代の俳諧師、其角。すでに書き尽くされた感のある、それでもまだまだ書き継がれるであろう芭蕉はここでは脇役。主役として俎上に載せられるのは其角。今までに其角を主人公とした作品があっただろうか。

 『雪はことしも』もそうだったのだが、芭蕉に食傷気味の読者、あるいは芭蕉に影響を受けつつある読者にとって、芭蕉を巡る人々、芭蕉の影響を受けた人々についても知りたいのではないだろうか。彼ら芭蕉に入門した人々は芭蕉のどこに魅惑されたのだろう、なんていうことは、芭蕉の同時代人でしか分からない。

 たとえ書き手の主観が入ったとしても、その主観に同意しながら、あるいはいちゃもんをつけながら読み進めることができる小説というのは面白い文学形式だと思う。小説だからこそ読み進めることができる。

 章立てのタイトルは、其角の発句。

第一章 なきがらを笠に隠すや枯尾花
第二章 詩あきんど年を貪ル酒債哉
第三章 片腕はみやこに残す紅葉哉
第四章 日の春をさすがに鶴の歩ミ哉
第五章 霜の鶴土にふとんも被されず

 第一章は芭蕉終焉の有様。其角ら蕉門と芭蕉の別れ。第二章は其角の俳諧事始め。そして第五章は其角の晩年から終焉。宝晋斎其角永眠、享年四十七歳。これらの三章は、できるだけ史実に忠実にという配慮が働き過ぎたのか、其角の青年期、壮年期を記した第三章、第四章に比べて筆の運びが固すぎる。ところが、第三章、第四章の記述の伸びやかなこと、大胆に著者の主観を盛り込みながら、著者自身楽しみながら書いたのではないかという気がする。

 表紙絵の岩佐源兵衛勝重「群鶴図」。なぜ鶴だったのか。本書の白眉が第四章。そのタイトルが「日の春をさすがに鶴の歩ミ哉」。蕉門の俳諧師のひとり其角の生き様、そして連句の妙味を知ることができる恰好の書が、「詩あきんど 其角」として結実しました。

2016年8月11日 第1刷発行

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[ 2017/08/07 14:00 ] 国内の作家の本 別所真紀子 | TB(-) | CM(-)
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Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

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