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別所真紀子 「雪はことしも」

見たり、読んだり、思ったり。

別所真紀子 「雪はことしも」

「雪はことしも」
著 者 別所真紀子(べっしょ まきこ)
発行所 新人物往来社


 俳諧の世界を題材とした小説集。

 地下の連歌、俳諧。素人にとって、俳諧と俳句は同じものと考えてしまうかもしれないが、俳諧と俳句とは全くの別もの。俳諧の発句を正岡子規が一句だけ独立させたものが俳句。したがって芭蕉など俳諧師を題材として、俳諧の世界の丁々発止を描こうとするなら、小説家自身が座の文芸である俳諧に親しんでいなければ到底書けるものではない。たとえ書いたとしても、その小説の内容は浅はかなものになってしまうだろう。

 本書の大きな特色は、平成11年(1999年)7月現在、著者が「あとがき」で「俳諧に魅惑されて二十年近く」と書くように、俳諧に造詣の深い人物が執筆している。したがって、その内容は今までに描かれた俳諧師を主人公とした小説にない深い仕上がりとなっている。単なる読者である私が言うのも恐れ多いのだが、流石に、第21回歴史文学賞を受賞しただけのことはある。俳諧の場の丁々発止こそが、本書の白眉。共同の文芸である俳諧の場の緊張感、その一端を味わうことができる。

 本書に収められているのは、表題作を含めて五編。

「雪はことしも」
 主人公は越人。芭蕉歿後、多くの門人が芭蕉の書簡を公表しているのだが、越人は一通も公表していない。越人は何故芭蕉の手紙を遺さなかったのか。越人の葛藤が描かれます。

「ちり椿」
 主人公は凡兆の妻羽紅。『猿蓑』に集中七番目という入集を果たした羽紅の世界が描かれます。

「上総の空を」
 芭蕉歿後七十年を経て信州柏原に生を受けた一茶の世界が織本花嬌との関わりで描かれます。

「浜藻春風」
 三十代に入ってから父親と西国行脚に出かけ、女性ばかりの付合集を刊行した浜藻の世界が夏目成美、一茶との交友を通して描かれます。

「浜藻歌仙留書」
 浜藻を核に、歌仙を巻く連句の座に集まる人々の人間模様が描かれます。

1999年9月1日 第1刷発行

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[ 2017/08/01 01:00 ] 国内の作家の本 別所真紀子 | TB(-) | CM(-)
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きどのひつじ

Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

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