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たとふれば猫かもしれず

読書メモ、見たり、読んだり、思ったり。

「死角 オーバールック」 マイクル・コナリー

「死角 オーバールック」
著 者 マイクル・コナリー
訳 者 古沢嘉通 (ふるさわ よしみち)
発行所 講談社文庫


 原題は、The Overlook。

 マルホランド・ダムの上にある展望台で発見された男性の射殺死体。処刑のようだという。後頭部に二発の銃弾。何者かが被害者を展望台に連れていき、脳みそをぶちまけた。

 殺人事件の被害者はスタンリー・ケント。

 ボッシュが被害者の車のグラブ・コンパートメントをひらくと、ロサンジェルス郡にあるさまざまな病院が発行したクリップ留め式IDがいくつも車の床にこぼれ落ちた。

 トランクは狭く、空っぽだったが、懐中電灯の光線を浴びて、トランクの底のカーペット地にへこんでいる箇所が四つあることに気づいた。

 四本脚か四つの車輪のついたなにか角張って重たいものが、トランクのなかに運びこまれていたが、トランクが蓋をあけた状態で見つかっていることから、それがなんであれ、なかにあった物体は、殺人の間に持ち去られたようだ。

 境界線のところでボッシュの名前とバッジ番号を控えたパトロール担当の巡査によると、FBIの女性捜査官が事件現場への立ち入り許可を求めているという。

 連邦捜査局レイチェル・ウォリング特別捜査官だった。

 テロリストが関与している可能性が浮上。聖アガタ病院の保管庫にあった三十二個のセシウム・カプセルをスタンリー・ケントが盗み、見知らぬ人物に引き渡した可能性が極めて高くなった。

 FBIの捜査介入に阻まれながらも、ボッシュはひたすら犯人を追った。

 十二時間の緊迫の捜査を描く、スピード感溢れるサスペンス。

訳者あとがき  古沢嘉通

2010年12月15日 第1刷発行
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[ 2020/01/27 21:00 ] マイクル・コナリー | TB(-) | CM(0)

「エコー・パーク」 上・下 マイクル・コナリー

「エコー・パーク」 上・下
著 者 マイクル・コナリー
訳 者 古沢嘉通 (ふるさわ よしみち)
発行所 講談社文庫


 原題は、Echo Park。

 午前二時ごろ、ロサンジェルスのエコー・パーク地区で停止を命じられた不審車両のビニール袋から女性ふたりのバラバラ死体が見つかった。逮捕された容疑者の男は司法取引を申し出て、死刑免除を条件に過去九件の殺人も自供するという。

 その中に未解決事件班のボッシュが長年追い続けている若い女性の失踪事件も含まれていた。ボッシュが探り続ける未解決事件のホシとは違う人物が自供した。

 連続殺人を自供している犯人レイナード・ウェイツの事情聴取を前日にひかえたボッシュは心理分析官の経験を持つFBI捜査官レイチェル・ウォリングに助言を求めた。

 ウェイツの自供に基づいて現場検証が行われるのだが、隙をついたウェイツが逃亡。パートナーのキズミン・ライダーもまた銃撃を受けてしまう。

 事件は急展開。

 自宅待機を命じられたボッシュはレイチェルとともに動き出す。

訳者あとがき The best Harry Bosch story yet 古沢嘉通

2010年4月15日 第1刷発行
[ 2020/01/27 12:47 ] マイクル・コナリー | TB(-) | CM(0)

「60歳からのひとり旅 鉄道旅行術」 松本典久

「60歳からのひとり旅 鉄道旅行術」
著 者 松本典久 (まつもと のりひさ)
発行所 天夢人

 仕事上の必要に迫られ自動車の免許を取って以来、長距離移動に鉄道を使うこともなかったのだが、そろそろ完全リタイアの年齢。そうなってくると、自動車で遠出をすることもなくなった今、自動車を持っていること自体が宝の持ち腐れ。

 そんなことを考えるこの頃、つらつらと手に取った本書。取り敢えず読んでおけば何かの役に立つかもしれないなどと思いつつも、読めば連想は広がる。

 p.152の「快適アドバイス13 飲料と非常食は必携」を読みながら、数年前職場で座席を隣り合った年若い女性の同僚のことを思い出した。

 英語を担当しているだけあって彼女は語学に堪能。ネット上で安価な航空券を見つけ、それが休日と重なっていると、ネット上ですべての予約を滞りなくおこなっては、散歩がてら海外へ出かけて行く。

 そんな彼女の非常食は干芋。小さなタッパーに入れた干芋を時おり摘まんで食べていたことを思い出す。彼女にとって、アラビア半島を移動する遊牧民のナツメヤシに相当するものが干芋だったのである。

 確かに日本人にとって、非常用の完全栄養食として干芋に勝るものはありえない。子供の頃、干芋を時おり口にした経験があるはずなのだが、どんな味だったろうか。思い出せない。

2019年8月29日 初版第1刷発行
[ 2020/01/24 07:23 ] 松本典久 | TB(-) | CM(0)

「芭蕉七部集(古典講読シリーズ)岩波セミナーブックス102」 上野洋三

「芭蕉七部集(古典講読シリーズ)岩波セミナーブックス102」
著 者 上野洋三 (うえの ようぞう)
発行所 岩波書店

 芭蕉七部集『冬の日』『春の日』によって連句理解を深める。

『冬の日』第一歌仙

狂句こがらしの身は竹斎に似たる哉  芭蕉

たそやとばしるかさの山茶花  野水

有明の主水に酒屋つくらせて  荷兮

かしらの露をふるふあかむま  重五

朝鮮のほそりすすきのにほひなき  杜国

日のちりちりに野に米を刈る  正平

わがいほは鷺にやどかすあたりにて  野水

髪はやすまをしのぶ身のほど  芭蕉

いつはりのつらしと乳をちぼりすて  重五

きえぬそとばにすごすごとなく  荷兮

影法のあかつきさむく火を焼(た)きて  芭蕉

あるじはひんにたえし虚家(からいへ)  杜国

田中なるこまんが柳落つるころ 荷兮

霧にふね引く人はちんばか  野水

たそかれを横にながむる月ほそし  杜国

となりさかしき町に下り居る  重五

二の尼に近衛の花のさかりきく  野水

蝶はむぐらにとばかり鼻かむ  芭蕉

のり物に簾透く顔おぼろなる  重五

いまぞ恨の矢をはなつ声  荷兮

ぬす人の記念(かたみ)の松の吹きをれて  芭蕉

しばし宗祇の名を付けし水  杜国

笠ぬぎて無理にもぬるる北時雨  荷兮

冬がれわけてひとり唐苣(たうちさ)  野水

しらじらと砕けしは人の骨か何  杜国

烏賊はえびすの国のうらかた  重五

あはれさの謎にもとけじ郭公(ほととぎす)  野水

秋水一斗もりつくす夜ぞ  芭蕉

日東の李白が坊に月を見て  重五

巾(きん)に木槿をはさむ琵琶打  荷兮

うしの跡とぶらふ草の夕ぐれに  芭蕉

箕に鮗(このしろ)の魚をいただき  杜国

わがいのりあけがたの星孕むべく  荷兮

けふはいもとのまゆかきにゆき  野水

綾ひとへ居湯に志賀の花漉して  杜国

廊下は藤のかげつたふ也  重五


『春の日』第三歌仙

蛙のみききてゆゆしき寝覚かな  野水

額にあたるはる雨のもり  旦藁

蕨烹る岩木の臭き宿かりて  越人

まじまじ人をみたる馬の子  荷兮

立ちてのる渡しの舟の月影に  冬文

芦の穂を摺る傘の端  執筆

磯ぎはに施餓鬼の僧の集まりて  旦藁

岩のあひより蔵みゆる里  野水

雨の日も瓶焼くやらん煙たつ  荷兮

ひだるき事も旅の一つに  越人

尋ねよる坊主は住まず錠おりて  野水

解きてやおかん枝むすぶ松  冬文

咲わけの菊にはをしき白露ぞ  越人

秋の和名にかかる順(したがふ)  旦藁

初雁の声にみづから火を打ちぬ  冬文

別れの月になみだあらはせ  荷兮

跡ぞ花四の宮よりは唐輪にて  旦藁

春ゆく道の笠もむつかし  野水

永き日や今朝を昨日に忘るらん  荷兮

簀の子茸生ふる五月雨の中  越人

紹鷗が瓢はありて米はなく  野水

連歌のもとにあたるいそがし  冬文

滝壺に柴押しまげて音とめん  越人

岩苔とりの籠にさげられ  旦藁

むさぼりに帛着てありく世の中は  冬文

筵二枚もひろき我庵  越人

朝毎の露あはれさに麦作る  旦藁

碁うちを送るきぬぎぬの月  野水

風のなき秋の日舟に網入れよ  荷兮

鳥羽の湊のをどり笑ひに  冬文

あらましのざこね筑摩も見て過ぎぬ  野水

つらつら一期聟の名もなし  荷兮

我春の若水汲みに昼起きて  越人

餅を喰ひつついはふ君が代  旦藁

山は花所のこらず遊ぶ日に  冬文

くもらずてらず雲雀鳴く也  荷兮


『冬の日』第三歌仙 名残の折

うれしげに囀る雲雀ちりちりと  芭蕉

真昼の馬のねぶたがほ也  野水

をかざきや矢矧の橋のながきかな  杜国

庄屋のまつをよみて送りぬ  荷兮

捨てし子は柴刈る長にのびつらん  野水

晦日をさむく刀売る年  重五

雪の狂呉の国の笠めづらしき  荷兮

襟に高雄が片袖をとく  はせを

あだ人と樽を棺に吞みほさん  重五

芥子のひとへに名をこぼす禅  杜国

三ケ月の東は暗く鐘の声  芭蕉

秋湖かすかに琴かへす者  野水

烹る事をゆるしてはぜを放ちける  杜国

声よき念仏藪をへだつる  荷兮

かげうすき行灯けしに起き侘びて  野水

おもひかねつも夜るの帯引く  重五

こがれ飛ぶたましひ花のかげに入る  荷兮

その望の日を我もおなじく  はせを

1992年7月6日 第1刷発行
[ 2020/01/23 14:00 ] 上野洋三 | TB(-) | CM(0)

「リンカーン弁護士」 上・下 マイクル・コナリー

「リンカーン弁護士」 上・下
著 者 マイクル・コナリー
訳 者 古沢嘉通 (ふるさわ よしみち)
発行所 講談社文庫


 原題は、The Lincoln Lawyer。

 最初に読んだコナリー作品が「真鍮の評決 リンカーン弁護士」。ストーリー展開もさることながら、この時ほど米国の陪審制について理解を深めることができたことはなかった。日本の刑事司法制度と米国の刑事司法制度の違いを小説という形で知ることができる格好の教材になり得ると思ったものだ。

 「判決破棄 リンカーン弁護士」「証言拒否 リンカーン弁護士」と読み進め、その後ハリー・ボッシュに行き着いたのだが、コナリー作品は「ナイトホークス」から読み始めなければその面白さを堪能することができないと得心し、ようやくミッキー・ハラーが登場する最初の作品を読み終えることができた。

 刑事弁護士ミッキー・ハラー登場。

 そうはいってもミッキー・ハラーを如何なるキャラクターに仕あげていくか、本書が発表された段階ではまだ八割の仕あがりだったのかもしれない。私にとって「真鍮の評決」がミッキー・ハラー主役の作品としては断トツの面白さだった。

 扉のことばは「無実の人間ほど恐ろしい依頼人はない」。

 そんなこんなで本日の毎日新聞朝刊、特別編集委員の山田孝男が「風知草」でとりあげたのは逃亡したカルロス・ゴーン被告。タイトルは「具体的な反論を急げ」。「司法制度の改善は必要だが、全否定の宣伝攻勢に驚いてモジモジしている場合ではない」と山田孝男は締めくくる。

 米国の刑事司法制度、陪審制について知りたいなら、「真鍮の評決」こそが格好のテキスト。

訳者あとがき
Have Case, Will Travel(事件有らば、遠方可) 古沢嘉通

2009年6月12日 第1刷発行
[ 2020/01/20 18:15 ] マイクル・コナリー | TB(-) | CM(0)

「バッドラック・ムーン」 上・下 マイクル・コナリー

「バッドラック・ムーン」 上・下
著 者 マイクル・コナリー
訳 者 木村二郎 (きむら じろう)
発行所 講談社文庫


 原題は、Void Moon。

 本書を読み終えた後、2010年にドイツ推理作家協会賞(グラウザー賞)を受賞したというゾラン・ドヴェンカーの『謝罪代行社』(原題 Sorry)を読み始めたのだが、最初の50ページで挫折。読み続けようという好奇心が継続しない。ここのところ読み続けているコナリー作品とは大違い。

 コナリー作品の場合はページをめくる指がもどかしく、物語を読もうとする視線移動どころか、ページを一瞬にして読みとることのできない脳の働きすらもどかしい。それほどコナリー作品に没頭してしまう理由は、コナリー作品が私に対する共感力を発しているからに違いない。

 共感できることこそが小説を読む醍醐味。時と場所をこえて共感できる作品は面白い。『モンテクリスト伯』もまたそうだった。

 読者にどれだけ共感を持って読ませることができるかどうか。共感できる作品に出合った時、その読書体験はいつか生かされる。それどころか本を読むという行為自体が至福の瞬間なのである。もっともっと面白い本を読みたい。

 仮釈放中の元窃盗犯キャシー・ブラックは優秀な自動車販売員として働いている。

 生後三日で別れさせられた彼女の娘が養父母と暮らしている家が『売物件』の看板とともにオープンハウスとして公開されていた。

 オープンハウスを訪れた後、キャシーは大金を得るための仕事を求めて、亡くなった恋人マックスの異父兄レオに連絡をとった。レオから受けた仕事のカモはプロのギャンブラー。

 命がけで盗んだ大金は、犯罪組織がらみのヤバい代物だった。金を盗まれたカジノ「クレオパトラ」の支配人ヴィンセント・グリマルディから事件の始末を依頼されたのは、裏の顔を持つ私立探偵ジャック・カーチ。

 関係者4人が惨殺され、魔の手はキャシーの最愛の人物、実の娘にまで及んだ。

解説 コナリーの創造した新しい主人公   木村仁良(じろう)

2001年8月15日 第1刷発行
[ 2020/01/17 01:42 ] マイクル・コナリー | TB(-) | CM(0)

「終決者たち」 上・下 マイクル・コナリー

「終決者たち」 上・下
著 者 マイクル・コナリー
訳 者 古沢嘉通 (ふるさわ よしみち)
発行所 講談社文庫


 原題は、The Closers。

 ハリー・ボッシュが未解決事件班の刑事としてロサンジェルス市警に復帰、相棒はキズミン・ライダー。17年前に起きた少女殺人事件の再捜査にあたる。

 「シティ・オブ・ボーンズ」のラストで刑事を辞職し、「暗く聖なる夜」「天使と罪の街」では私立探偵として活動してみたものの、ボッシュ・シリーズはバッジを持ったボッシュでなければ面白くない。殺人事件の捜査を使命とするボッシュにとってバッジは欠かすことのできないアイテムである。

 組織に属すれば逃れることのできない官僚主義や警察内部の利害関係はあるものの、それもまたボッシュ・シリーズを読み続けるうえでの醍醐味。

 訳者あとがきで古沢嘉通が「本書が、訳者の最も好きなボッシュものなのである」と絶賛しているが、本書がその後のボッシュ・シリーズが展開されるうえでのターニングポイントになったことは明らかである。

訳者あとがき ボッシュ・シリーズの極み   古沢嘉通

2007年9月14日 第1刷発行
[ 2020/01/13 15:47 ] マイクル・コナリー | TB(-) | CM(0)