たとふれば猫かもしれず

見たり、読んだり、思ったり。

「アンソロジー 隠す」 〈アミの会(仮)〉 大崎梢・加納朋子・近藤史恵・篠田真由美・柴田よしき・永嶋恵美・新津きよみ・福田和代・松尾由美・松村比呂美・光原百合

「アンソロジー 隠す」 〈アミの会(仮)〉
著 者 大崎梢・加納朋子・近藤史恵・篠田真由美・柴田よしき・永嶋恵美・新津きよみ・福田和代・松尾由美・松村比呂美・光原百合
発行所 文藝春秋


 アミの会(仮)によるアンソロジー第三弾。
 11人の女性作家による短編競作集。

 テーマは「隠す」。
 何を隠すのか、どのように隠すのか、誰から隠すのか。サスペンスあり、スリラーあり、ミステリーありと作家それぞれの持ち味を堪能することができる。「隠す」ということについての視点のあり様、見方について思索を深めることができる。

「理由(わけ)」 柴田よしき
 辻内美希が犯行の動機を黙秘し続けた理由は。

「自宅警備員の憂鬱」 永嶋恵美
 弟の友人がベッドの下に隠したものは。

「誰にも言えない」 松尾由美
 アメリカ人留学生リンジーのホームステイ先の夫婦の態度が急に変わった理由は。

「撫桜亭奇譚」 福田和代
 埋蔵金伝説の伝わる土地に建てられた屋敷に秘められた真実とは。

「骨になるまで」 新津きよみ
 母方の祖母が骨になっても明かさなかった秘密とは。

「アリババと四十の死体」「まだ折れていない剣」 光原百合
 女奴隷モルギアナの秘密。

「バースデイブーケをあなたに」 大崎梢
 多目的ケアハウスの入居者のひとり早瀬奈美子の誕生日に毎年届けられるバースデイブーケ。贈り主はアルファベット一文字で「M」。「M」とは。

「甘い生活」 近藤史恵
 子供の頃から、誰かのものが欲しくなるタチの千尋が最後に得たものは。

「水彩画」 松村比呂美
 水彩画の画家である母と塔子の葛藤。母がしまい込んでいた秘密とは。

「少年少女秘密基地」 加納朋子
 時間的すれ違いの中で、ある小屋を遊び場所にしていた少年二人と少女二人の秘密とは。

「心残り」 篠田真由美
 一枚の赤い櫛にまつわる秘密とは。

2017年2月10日 第1刷発行

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[ 2017/08/15 15:00 ] 国内の作家の本 大崎梢 | TB(-) | CM(-)

別所真紀子 「詩あきんど 其角」

「詩あきんど 其角」
著 者 別所真紀子(べっしょ まきこ)
発行所 幻戯書房


 表紙絵は、岩佐源兵衛勝重「群鶴図」。岩佐といえば、「奇想の系譜」岩佐又兵衛。又兵衛と似た名前の人物がいたもんじゃ、又兵衛との関係はと、「装画について」書かれている箇所を読むと、「岩佐源兵衛勝重は江戸初期の画人で、岩佐又兵衛の嫡男として生まれる」記載されている。

 源兵衛勝重は又兵衛の息子だったのか。父・又兵衛とは違った才能を発揮したようだと思いつつ、ページを捲ると、これまたゴージャスなことに、其角直筆の短冊が二枚載せられている。

傾廓 時鳥あかつき傘を買せけり  キ角
小坊主や松にかくれて山ざくら  其角

 そして其角の肖像画は、富士山上行寺蔵の其角像。

 本文以前の段階で何ともゴージャスな口絵ページ。

 世間が芭蕉芭蕉と芭蕉に傾注するなか、著者が筆に任せたて記したのは、その弟子にして世にも稀なる才能、稀代の俳諧師、其角。すでに書き尽くされた感のある、それでもまだまだ書き継がれるであろう芭蕉はここでは脇役。主役として俎上に載せられるのは其角。今までに其角を主人公とした作品があっただろうか。

 『雪はことしも』もそうだったのだが、芭蕉に食傷気味の読者、あるいは芭蕉に影響を受けつつある読者にとって、芭蕉を巡る人々、芭蕉の影響を受けた人々についても知りたいのではないだろうか。彼ら芭蕉に入門した人々は芭蕉のどこに魅惑されたのだろう、なんていうことは、芭蕉の同時代人でしか分からない。

 たとえ書き手の主観が入ったとしても、その主観に同意しながら、あるいはいちゃもんをつけながら読み進めることができる小説というのは面白い文学形式だと思う。小説だからこそ読み進めることができる。

 章立てのタイトルは、其角の発句。

第一章 なきがらを笠に隠すや枯尾花
第二章 詩あきんど年を貪ル酒債哉
第三章 片腕はみやこに残す紅葉哉
第四章 日の春をさすがに鶴の歩ミ哉
第五章 霜の鶴土にふとんも被されず

 第一章は芭蕉終焉の有様。其角ら蕉門と芭蕉の別れ。第二章は其角の俳諧事始め。そして第五章は其角の晩年から終焉。宝晋斎其角永眠、享年四十七歳。これらの三章は、できるだけ史実に忠実にという配慮が働き過ぎたのか、其角の青年期、壮年期を記した第三章、第四章に比べて筆の運びが固すぎる。ところが、第三章、第四章の記述の伸びやかなこと、大胆に著者の主観を盛り込みながら、著者自身楽しみながら書いたのではないかという気がする。

 表紙絵の岩佐源兵衛勝重「群鶴図」。なぜ鶴だったのか。本書の白眉が第四章。そのタイトルが「日の春をさすがに鶴の歩ミ哉」。蕉門の俳諧師のひとり其角の生き様、そして連句の妙味を知ることができる恰好の書が、「詩あきんど 其角」として結実しました。

2016年8月11日 第1刷発行

[ 2017/08/07 14:00 ] 国内の作家の本 別所真紀子 | TB(-) | CM(-)

柴崎友香 「春の庭」

「春の庭」
著 者 柴崎友香(しばさき ともか)
発行所 文春文庫


 読みたいと思ったのは確かなのだが、読み終えた途端、読みたいと思った理由を思い出せず、取り敢えず読めたらいいかという読書遍歴。それがどうなるか分からないけれども、それが本を読むということの本質、早い話が暇つぶしの活字版が読書ということなのだろう。暇つぶしであるからには、読む本の内容が面白いに越したことはない。

 表題作を含めて四作をおさめる本書、どの作品も徹頭徹尾「住居物語」だという思いを抱いてしまった。偶然にも住み始めた、あるいは一時的に住んでいる、住むということ自体が長い人生あるいは短い人生にとって一時的なものなのだが、住むことをモチーフとして書かれたのが本書、というか、もしかして著者の柴崎友香自身が意識せずしてそんな物語を書いてしまうのかもしれない。そして書きたくてたまらないのだと思う。

 住むことについてのこだわり、というか、小説を書き始めるに当ってまず拘ってしまうのが、住居のようす。載せられているどの作品も場面設定される家のようすが詳細に語られている。

 そういえば、毎日新聞の日曜版に掲載されている彼女の小説「待ち遠しい」もまた、そんな気がしてくる。主人公が借りている住居のようす、その住居の周りのようすから始まったはずだ。そんなこと「どうでもいいやん」と思いながらも、それを読む読者がいるという不思議。柴崎自身がそんな読者だったからこそ、「どうでもいいやん」ということに世間が興味を持つということを知り尽くしてしるのかもしれない。だからこそ、小説の主要な舞台である住居のようすから物語るのかもしれない。

 表題作「春の庭」は2014年の第151回芥川賞受賞作。

 解説は、堀江敏幸。
 文体の中途転換、俯瞰の文芸の妙味については、堀江敏幸の解説が参考になる。

2017年4月10日 第1刷発行

[ 2017/08/06 10:00 ] 国内の作家の本 柴崎友香 | TB(-) | CM(-)

古川日出男 「平家物語 犬王の巻」

「平家物語 犬王の巻」
著 者 古川日出男
発行所 河出書房新社


 速いはやい、物語のテンポは迅い。
 平家物語異聞。

 世にも数奇な宿命のもとに生まれた二人の人物、犬王と友魚。二人が出会うことによって紡ぎだされる類まれなる宿命奇譚。二人の生い立ちがいつしか収斂し一つの物語に。一人の物語ではああそうで結末を迎えてしまったかもしれないが、二人の物語、二つの物語が合わさることによって、面白さが倍化、相乗効果。倍化どころか、幾十倍幾万倍もの面白さへと変幻変化。面白さにつられて、あっという間に読み終えてしまう。読み終えたあとも、余情たっぷり。切なさが余情に拍車をかける。

 初めて読んだ作家ながら、古川日出男、ただものじゃありませんね。何とも不思議な文体。最終ページに載せられた著者紹介、経歴を見ると、日本推理作家協会賞、日本SF大賞、三島由紀夫賞、野間文芸新人賞、読売文学賞などを受賞。語り部のような独特の文体には、度肝を抜かされましたが、次に読むとすれば、古川版「源氏物語」、『女たち三百人の裏切りの書』でしょうか。どんな展開が待っているのやら。

 本書を読み進めながら、頭の片隅をよぎったのが手塚治虫の「どろろ」。そういえば、「どろろ」ってどんな物語だったっけ。

2017年5月30日 初版発行

[ 2017/08/03 23:00 ] 国内の作家の本 古川日出男 | TB(-) | CM(-)

大橋弘一 「日本野鳥歳時記」

「日本野鳥歳時記」
著 者 大橋弘一
発行所 ナツメ社

 登場する鳥は150余種。メインで扱われるのは、そのうちの85種。それらの鳥が四季ごとに「旬」の鳥として選ばれ、生態写真とエピソードで紹介されます。呼び名の由来から昔話、伝説の紹介、古典文学での扱われ方、日本だけでなく古今東西の価値観の対比など、人と鳥との関係を伺わせるエピソードが満載されています。

 身近な環境に、色鮮やかな鳥をこんなにもたくさん見ることができるのかとの思いを新たにすることができる。多くの鳥が渡りと呼ばれる季節的な移動をするのであれば、日本は温帯の気候。春になればツバメなど南からの渡り鳥。秋になればハクチョウなど北からの渡り鳥。地球温暖化の影響もあるのか連日灼熱地獄のごとき盛夏の日々とはいうものの、温帯に属する日本は鳥にとって格好の生息域なのかもしれない。

 つい先日の毎日新聞夕刊(2017年7月26日)に「大阪城公園で野鳥観察26年」の一面記事が載せられていた。記事に登場する元山さん、当初は野鳥観察に無関心だった。大阪城公園に行っても「ハトとカラスとスズメしかおらへん」と思っていたのだが、とある冬の日曜日、野鳥観察に興味を持つ娘さんと大阪城公園へ足を運んだときに出会ったのが「シメ」だった。以来、野鳥観察26年。出会った鳥169種を記録集「大阪城公園の野鳥」にまとめたという。

 例年そうなのだが、夏真っ盛りの今「暑い、暑い」と言いながらも季節はめぐり、涼しさを感じる秋は確実にやってくる。そんな秋を心待ちにしながら、ハト、カラス、スズメ以外の鳥の動きにも目を向けていこうかと思っている。

2015年12月31日 初版発行

[ 2017/08/02 01:00 ] 野鳥の本 大橋弘一 | TB(-) | CM(-)

別所真紀子 「雪はことしも」

「雪はことしも」
著 者 別所真紀子(べっしょ まきこ)
発行所 新人物往来社


 俳諧の世界を題材とした小説集。

 地下の連歌、俳諧。素人にとって、俳諧と俳句は同じものと考えてしまうかもしれないが、俳諧と俳句とは全くの別もの。俳諧の発句を正岡子規が一句だけ独立させたものが俳句。したがって芭蕉など俳諧師を題材として、俳諧の世界の丁々発止を描こうとするなら、小説家自身が座の文芸である俳諧に親しんでいなければ到底書けるものではない。たとえ書いたとしても、その小説の内容は浅はかなものになってしまうだろう。

 本書の大きな特色は、平成11年(1999年)7月現在、著者が「あとがき」で「俳諧に魅惑されて二十年近く」と書くように、俳諧に造詣の深い人物が執筆している。したがって、その内容は今までに描かれた俳諧師を主人公とした小説にない深い仕上がりとなっている。単なる読者である私が言うのも恐れ多いのだが、流石に、第21回歴史文学賞を受賞しただけのことはある。俳諧の場の丁々発止こそが、本書の白眉。共同の文芸である俳諧の場の緊張感、その一端を味わうことができる。

 本書に収められているのは、表題作を含めて五編。

「雪はことしも」
 主人公は越人。芭蕉歿後、多くの門人が芭蕉の書簡を公表しているのだが、越人は一通も公表していない。越人は何故芭蕉の手紙を遺さなかったのか。越人の葛藤が描かれます。

「ちり椿」
 主人公は凡兆の妻羽紅。『猿蓑』に集中七番目という入集を果たした羽紅の世界が描かれます。

「上総の空を」
 芭蕉歿後七十年を経て信州柏原に生を受けた一茶の世界が織本花嬌との関わりで描かれます。

「浜藻春風」
 三十代に入ってから父親と西国行脚に出かけ、女性ばかりの付合集を刊行した浜藻の世界が夏目成美、一茶との交友を通して描かれます。

「浜藻歌仙留書」
 浜藻を核に、歌仙を巻く連句の座に集まる人々の人間模様が描かれます。

1999年9月1日 第1刷発行

[ 2017/08/01 01:00 ] 国内の作家の本 別所真紀子 | TB(-) | CM(-)

近藤誠 「健康診断は受けてはいけない」

「健康診断は受けてはいけない」
著 者 近藤 誠(こんどう まこと)
発行所 文春新書


 健康診断という美名の過剰診療。健診は日本の医療業界に繁栄をもたらすための基本システム。医療機器の日進月歩によって、以前は見つけ出すことができなかったほんの小さな腫瘍をも現代の医学機器では発見することが可能になった。このことをきっかけに推奨され始めたのがガンの早期発見早期治療。国を挙げて推奨されているガン検診は本当に救命効果があるのだろうか。

 本書の著者近藤先生の結論はnon。

 本書第5章から小タイトルを拾ってみると、

「転移するがん」と「転移しないがん」
「今は転移しなくとも、放置すれば転移するがん」は存在しない
「潜在がん」は放置すればよい――前立腺がん、甲状腺がん、乳がん
日本では「早期がん」も、尾宇部ではほとんど「良性病変」
「発症しない早期がん」、「消えるがん」
「転移するがん」は発見前にすでに転移

などなど。

 そして最終章で近藤先生は、「がんを含めた検査病、現代医療の大部分は、医者たちと科学技術が築き上げた、壮大な虚構」であると結論づけます。

 老化という未知の領域。年齢を重ねると、今まで難なくできていたことができなくなって当たり前。これからも朝の体操を欠かさずに続けることによって、医者や医療に頼ることのない日々を過ごしていきたいと思う。

2017年2月20日 第1刷発行

[ 2017/07/29 15:00 ] 生き方の本 近藤誠 | TB(-) | CM(-)
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きどのひつじ

Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

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