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たとふれば猫かもしれず

見たり、読んだり、思ったり。

「特捜部Q 知りすぎたマルコ」 ユッシ・エーズラ・オールスン

「特捜部Q 知りすぎたマルコ」
著 者 ユッシ・エーズラ・オールスン
訳 者 吉田 薫 (よしだ かおる)
発行所 早川書房


 コペンハーゲン警察「特捜部Q」の責任者カール・マーク警部補とアシスタントのアサドとローセ・クヌスンが活躍するデンマーク発の警察小説シリーズ、第五弾。

 2008年秋、カメルーン。
 デンマークの資金提供による政府開発援助。熱帯雨林で原住民の農業指導にあたっていた青年ルイ・フォンが非業の死を遂げた。死に際に打たれた一件のショートメール。

 2008年秋、デンマーク。
 メールを受けたのは外務省開発援助事業評価事務局の上級参事官ヴィルヤム・スターク。意味不明のショートメール。何か重大なことが起ったのではないか。

 メールを解読したのは、現地への出張を命じられたスタークが偶然ラウンジで同席することになったスウェーデン人。解読されたメールの内容は〝ジャーの開発援助で不正〟。

 ルイ・フォンはヴィルヤム・スタークに〝ジャーの開発援助で不正〟とショートメール打って姿を消した。

 2010年秋、デンマーク。
 幼い頃から、叔父が率いる窃盗団で物乞いやスリをさせられてきた15歳の少年マルコ・ジェイムソン。ある夜、組織の秘密を耳にしまった彼は家を飛び出した。

 追手を逃れた彼は四つんばいになって森の茂みの中を進んだ。誰かが掘り起こしたような感触の柔らかい地面。マルコは急いで地面を掘り、身を隠した。

 2011年春、コペンハーゲン警察本部。

 作品の主要な登場人物、なかでも主人公はマルコ。
 次々とマルコを襲う危険。相手は残忍な殺人のプロ。

 読者はマルコに感情移入しながら、作品を読み進めることになる。

 特捜部Qシリーズの魅力は、シリアスな内容にもかかわらず、カール警部補とアシスタントのアサドとローセ、三人の醸し出す軽妙なタッチ、ユーモラスなやりとりで進められる物語展開。

 もっと早く読むことができればと、自分の読む能力の限界にもどかしさを感じてしまう。

訳者あとがき

2014年7月15日 発行

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「ペリリュー 楽園のゲルニカ」 第1巻~第5巻 武田一義

「ペリリュー 楽園のゲルニカ」 第1巻~第5巻
著 者 武田一義 (たけだ かずよし)
発行所 白泉社

 
 2015年4月、天皇皇后両陛下がペリリュー島を訪問。

 1944年(昭和19年)夏、田丸一等兵は米軍上陸間近のペリリュー島にいた。

 緻密なタッチの背景と三頭身のデフォルメされた登場人物で描かれた戦争の現実。漫画表現で戦争を描くことの是非はともかく、太平洋の島々で行われた戦争の実態を学ぶための端緒にすることはできる。

 2016年より『ヤングアニマル』にて連載されている本作品は第46回日本漫画家協会賞優秀賞を受賞。

 各巻の表紙カバーに載せられた内容紹介文。

第1巻
昭和19年、夏。
太平洋戦争末期のペリリュー島に
漫画家志望の兵士、田丸はいた。
そこはサンゴ礁の海に囲まれ、
美しい森に覆われた楽園。
そして日米合わせて
5万人の兵士が殺し合う狂気の戦場。
当時、東洋一と謳われた飛行場奪取を目的に
襲い掛かる米軍の精鋭4万。
迎え撃つは〝徹底持久〟を
命じられた日本軍守備隊1万。
祖国から遠く離れた小さな島で、
彼らは何のために戦い、
何を思って生きたのか―――!?
〝戦争〟の時代に生きた若者の〝日常〟、
長く忘れ去られた〝真実〟の記録。
(2016年7月刊行)


第2巻
米軍上陸から
西浜の死闘を生き延びた田丸は、
仲間と共に洞窟に身を潜めていた。
昭和19年9月、酷暑のペリリュー島。
昼夜を問わず巡回する米軍の掃討部隊、
そして経験したことのない
強烈な喉の「渇き」が彼らを襲う―――。
水を得るにも命懸け。
そんな戦場の現実に馴れていく
自分に戸惑いを覚える田丸。
戦うために生きているのか、
生きるために死なねばならないのか―――。
〝戦争〟が〝日常〟にあった時代、
若者が見た真実の記録。
(2017年1月刊行)


第3巻
サクラ、サクラ―――
開戦から約1か月。
美しかったペリリュー島は、
日米両軍が殺し合う焦土と化した。
生きることすら難しい状況で、田丸は米軍の攻撃を逃れ、
日中は騒音と振動と蒸し風呂のような暑さの中で眠り、
夜は食糧を探す日々を過ごしていた。
一方、徹底持久を命じられ、
抗戦を続ける守備隊本部にも、米軍の猛火が迫る―――。
戦うにも武器弾薬は尽き、生きるにも食べ物が無い。
極限状態の中、ついに玉砕の許可を請うが―――!?
〝戦場〟を〝日常〟として受け入れることを余儀なくされ、
それでも前を向いた若者の〝生〟の記録。
(2017年7月刊行)


第4巻
11月24日、ペリリュー島、
米軍が上陸を開始して2か月半後、
ペリリュー島における日本軍の
組織的戦闘は終わりを告げる。
しかし、田丸ら生き残った兵の多くは、
その事実を知る由もなく、
水と食糧を求め戦場を彷徨っていた。
一方、米軍は、日本兵殲滅に向け
〝大掃討戦〟を開始―――。
水、食糧、武器弾薬、全てが欠乏した中、
〝生きるため〟の戦いが幕を開ける。
生と死が限りなく近くにある戦場で、
日常に抗い生きた若者の〝生命〟の記録。
(2018年2月刊行)


第5巻
昭和20年1月―――。
米軍の猛爆撃で瓦礫の島となったペリリュー島に、
草木が再び芽吹き、小動物が姿を現し始めた頃。
田丸、吉敷、小杉の3人は、茂る草木に隠れ、
必死に食糧を探す日々を過ごしていた。ある日、田丸は
米軍の缶詰とともに、地面に残された〝伝令〟を見つける。
そこにあったのは、生き残った日本兵全員の
苦境を打破する可能性のある言葉。
食糧となる米軍物資を奪取する方法を
教えるというものだった。
その策は、散り散りになった仲間を救い、
反撃へとつながる一歩となるか―――!?
〝戦場〟で生きた若者たち、
それぞれが〝体験〟した
真実の記録。
(2018年7月刊行)


次巻予告 (第6巻)
昭和20年3月、東京は大規模な空襲を受けた。
田丸の故郷にも着々と戦火が迫るが、
家族を想えど、互いの〝今〟を知ることは
出来ない―――。同じ頃、ペリリュー島にで
生き残った兵士たちは食糧を得た。
仲間と合流し、再び〝徹底持久〟という
目標を共有することも出来た。
今までなら諦めなければならなかったことが、
出来るようになった。死と隣り合わせの戦場で、
それは、ほんのひと時の平穏。
わずかな〝余裕〟を得るまで、気づかなかった
戦争の新たな苦しさを
田丸らは知る―――。
(2019年1月末頃発売予定!!)
[ 2018/08/18 20:00 ] 国内の作家の本 武田一義 | TB(-) | CM(0)

「凍りの掌 シベリア抑留記」 おざわゆき

「凍りの掌 シベリア抑留記」
著 者 おざわゆき
発行所 小池書院


 著者が、父のシベリア抑留体験談をもとに、同時代の体験記や証言集などを参考にして執筆しました。絵で語られるシベリア抑留記。小中学生をはじめとして、大人もまた、シベリア抑留を知るための端緒とすることができます。

 2015年 「あとかたの街」と共に第44回日本漫画家協会賞大賞を受賞。

 昭和18年 小澤昌一(おざわまさかず)は東洋大学予科の学生だった。
 昭和20年1月末 小澤昌一に臨時召集令状が届いた。学生服のままの簡素な出陣式。

 行く先も分からぬままに運ばれ、2月20日、北満州遜呉に到着。兵舎には守るべき飛行機は一機も残っていなかった。

 8月9日 日ソ中立条約を無視し、極東ソ連軍が侵攻してきた。
 8月16日 大本営指令大陸令第1382号 停戦命令の通達。

 8月23日 ソ連最高指揮官スターリンにより敗戦国日本についての極秘文書が署名されていた。極東シベリアの環境下の労働に身体的に適した日本人50万人を選出すること。日本人の大量強制抑留が開始された。

 北満州を出た時は夏服、収容所までの道のり、ひたすら歩かされ、行進が止まったのは10月10日。強制労働のはじまり。

 一日の食事は、雑穀が混じったような黒パンが一切れ、ソ連が満州かっら略奪して来たらしい高粱(コーリャン)のおかゆのようなスープ。これが一日二階、朝と晩。毛布は各自2枚。

 次の日も、次の日も炭坑掘りは続いた。
 具合の悪い者も無理やり働かされ、朝起きると亡くなっていた。亡くなった者の衣服はすべて脱衣し、他の者にまわされた。

 石炭の露天掘り。言葉で表せないほど厳しい作業。マイナス40度なら作業は控えられたが、マイナス30度なら外に出された。マイナス10度、20度なら暖かく感じるほどだった。しかしマイナス30度はきつかった。

 どれだけ掘っても、いつ終わるかしれん作業。
 世の果て、地の果て。
 そんな生易しいものじゃなかった。

 この年の冬、シベリア強制労働者の死者の数は最大を記録。
 キヴダの収容者は半数が犠牲となり壮絶を極めた。

 ダモイ(帰国)が叶い、小澤昌一の乗った船が舞鶴港に入港したのは昭和24年11月4日。ソ連で戦犯とみなされた人たちが最終的に帰国したのは昭和33年。最長で13年の抑留生活を強いられた。

 シベリア抑留によって人生が変わってしまった若者たちの物語。

 『凍りの掌』 刊行に寄せて    ちばてつや

 暖かく、やさしいタッチの
 マンガ表現なのに
 そこには「シベリア抑留」という
 氷点下の地獄図が
 深く、リアルに、静かに
 語られている。
 日本人が決して忘れてはいけない
 暗く悲しい六十六年前の真実。
 次代を担う若者たちには
 何としても読んで貰いたい
 衝撃の一冊。

2012年7月24日 初版第1刷発行

[ 2018/08/17 01:00 ] 国内の作家の本 おざわゆき | TB(-) | CM(0)

「特捜部Q カルテ番号64」 ユッシ・エーズラ・オールスン

「特捜部Q カルテ番号64」
著 者 ユッシ・エーズラ・オールスン
訳 者 吉田 薫 (よしだ かおる)
発行所 早川書房


 コペンハーゲン警察「特捜部Q」の責任者カール・マーク警部補とアシスタントのアサドとローセ・クヌスンが活躍するデンマーク発の警察小説シリーズ、第四弾。

 著者の怒りが小説として結実しました。
 物語終了後、特別に設けられたページに載せられた著者のコメント。

   この小説に描かれている女子収容所について

 本書に描かれているの女子収容所は、1923年から1961年前、大ベルト海峡に浮かぶスプロー島に実際に存在し、法律または当時の倫理観に反したか、あるいは〝軽度知的障害〟があることを理由に行為能力の制限を宣告された女性を収容していた。

 また、無数の女性が不妊手術の同意書にサインしなければ、施設すなわちこの島を出られなかったことも裏付けがとれている事実である。

 不妊手術の実施に適用されていた民族衛生法や優勢法といった法律は、1920年代から30年代には、欧米の30ヵ国以上――主に社会民主主義政権国家や新教徒的傾向の強い国家、もちろんナチス時代のドイツ帝国も、含まれている――で公布されていた。

 デンマークでは、1929年から1967年までに、およそ1万1せんにん(主に女性)が不妊手術を受けており、その半数が強制的に行われたと推測されている。

 そして、ノルウェー、スウェーデン、ドイツ等とは対照的に、デンマーク王国は今日に至るまで、こうした人権侵害にあった人々に対する賠償金の支払いも、謝罪も行っていない。


 物語の終了後、このような形で著者が自国の歴史を告発することは稀である。著者にそれほどの衝撃を与えた事実。その事実を取り込みながら作品化することに成功したからこそ、デンマークを代表する文学賞「金の月桂樹」賞を受賞することになったのかもしれない。文学の強みである。事実を事実として作品化することができたなんて、さすが北欧ミステリー。

 日本の場合、旧優生保護法(1948~1996)に基づき、障がい者らに強制的に不妊手術が実施された問題が厳然として存在する。実態解明は端緒についたばかり。

 過去の人権侵害を歴史的事実としてだけでなく、現代のデンマーク社会にはびこる人種差別問題ともからめ、ユーモアをまじえながら人々に訴えようとする思いが作品として実を結びました。

 古い未解決事件の解明にあたる特捜部Qのアシスタント、アサドとローセが注目したのは、1987年に起きた失踪事件だった。同じ日に5人の男女が失踪している。失踪者には何の共通点もないように思われたのだが、調べを進めるうちに5人を結びつける存在を知る。

 最終局面でのどんでん返し。きっと結末はこうなるに違いないと思いながら読み進めてしまいました。

 北欧ミステリー、あなどれません。

訳者あとがき

2013年5月15日 発行

「あとかたの街 全5巻」 おざわゆき

「あとかたの街」 全5巻
著 者 おざわゆき
発行所 講談社


 絵でしか語ることができないものがある。
 庶民の戦争。
 2015年 第44回日本漫画家協会賞大賞。

 太平洋戦争末期の昭和19年の名古屋。
 木村家は父と母、そして四姉妹の女系家族。

 主人公は木村家の次女・あい。
 国民学校高等科1年生。
 グラウンドで畑作業と竹槍を使っての軍事教練。

 7月7日 サイパン島玉砕

 妹ときが学童疎開で岐阜へ。

 2学期 学徒動員令により高等科の授業は一切取りやめ、あいもまた勤労動員生として工場勤務を課せられる。

 12月7日 午後1時36分
 東南海地震発生
 マグニチュード7.9
 死者1223人

 12月13日、名古屋の三菱発動機に爆弾。あいの友だちもまたそこで働いていた。「名古屋大空襲」の始まりだった。

 昭和20年3月19日 午前2時すぎ、氷点下4.6度
 初期は航空機産業を破壊する目的だった「名古屋大空襲」は、今や無差別に市民を対象としていった。すべては焼かれ、逃げ場はない。立ち尽くすばかりの木村家。

 生活の一切を焼かれた木村家は一家で岐阜の山中の村へ疎開。

 昭和20年8月15日 正午 玉音放送

  昔 この場所に 街が ありました
  その街で 人々が 暮らしていました

[ 2018/08/15 17:00 ] 国内の作家の本 おざわゆき | TB(-) | CM(0)

「グッドナイト マイ・ダーリン 悪女ジュスティーヌ Ⅰ」 インゲル・フリマンソン

「グッドナイト マイ・ダーリン 悪女ジュスティーヌ Ⅰ」
著 者 インゲル・フリマンソン
訳 者 佐宗鈴夫 (さそう すずお)
発行所 集英社文庫

 1998年、スウェーデン推理作家アカデミー最優秀長編賞受賞。

 ジュスティーヌはストックホルム郊外の湖畔の邸に一人で住んでいる。少女時代の酷いいじめ、継母からの虐待、恋人と参加したマレーシアのジャングルへの探検ツアーなど短い断章が脈絡なく続く。

 場面があちこちに飛ぶので、読者はもどかしい思いにさせられるが、物語はやがて一つの方向性のもとに結実していく。旅行で同行することになった他の女性に関心を示す恋人に対する嫉妬心。女性に対する敵愾心。ジュスティーヌは感情を抑制することができない。

 ある日突然訪れた、少女時代のいじめの中心人物。平静さを装いながらも揺れ動くジュスティーヌの心のうち、悪意と復讐心。ジュスティーヌの葛藤を知ることもなく、彼女に魅せられていくハンス・ペーテル・ベリマン。

 作者によって表現されたジュスティーヌの内的世界。北欧ミステリーにしては、あまりにもシンプルな犯行表現。なぜ彼女はそうせざるを得なくなったのか。続編『シャドー・イン・ザ・ウォーター』で明らかにされるのかもしれない。

 ジュスティーヌの物語が今始まった。

訳者あとがき 佐宗鈴夫

2011年7月25日 第1刷

「特捜部Q Pからのメッセージ」 ユッシ・エーズラ・オールスン

「特捜部Q Pからのメッセージ」
著 者 ユッシ・エーズラ・オールスン
訳 者 吉田 薫 (よしだ かおる)
    福原美穂子 (ふくはら みほこ)
発行所 早川書房


 コペンハーゲン警察「特捜部Q」の責任者カール・マーク警部補とアシスタントのアサドとローセ・クヌスンが活躍するデンマーク発の警察小説シリーズ、第三弾。

 ガラスの鍵賞を受賞した本作、前二作をしのぐ読み応え。カーチェイスなどの活劇場面は劇場でフルスクリーンを前にしたような読み応え、場面が眼前に迫ってくる。

 ある日、コペンハーゲン警察本部に、7年前にスコットランドの海から引き上げられた瓶に入っていたという手紙が届いた。届いた手紙は特捜部Qのカール・マーク警部補の手に委ねられる。

 冒頭の〝助けて〟という文字以外はほとんど判読不能。署名と思われる場所には〝P〟という頭文字だけが残っていた。

 作品のテーマは、子だくさんの家庭をターゲットにしたサイコパスによる連続誘拐殺人。

 誘拐犯は、「周囲を取り巻く社会の中でさまざまな観点から孤立した生活を送っている家族。慣習に強く縛られていて、きわめて制約の多い生活を送っている家族。特に裕福というわけではないが、十分豊かな家族」こうした家族からふたりの子供を選び、身代金が支払われた後に、ひとりを殺害し、もうひとりを解放していた。

訳者あとがき 吉田 薫

2012年6月15日 発行



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プロフィール

きどのひつじ

Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

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