FC2ブログ

たとふれば猫かもしれず

見たり、読んだり、思ったり。

「句集 萬の翅」 高野ムツオ

「句集 萬の翅」 
著 者 高野ムツオ
発行所 角川学芸出版


 著者の第五句集。
 平成十四年から二十四年までの496句を収める。
 平成二十三年(2011年)三月十一日は東日本大震災の発生した年。

 本句集により第65回読売文学賞(詩歌俳句賞)、第6回小野市詩歌文学賞、第48回蛇笏賞を受賞。

摘むまではありし茄子の目鼻立ち  高野ムツオ

地震の闇百足となりて歩むべし

厠上にて明日を思えば梅匂う

津波這う百日過ぎてやませ這う

擬死のまま至る死のあり大西日

2013年11月25日 初版発行

スポンサーサイト
[ 2019/01/20 10:00 ] 句集・俳論・俳文など 高野ムツオ | TB(-) | CM(0)

「スティール・キス」 ジェフリー・ディーヴァー

「スティール・キス」
著 者 ジェフリー・ディーヴァー
訳 者 池田真紀子
発行所 文藝春秋


 リンカーン・ライム・シリーズ第12作。

 二週間前の夜、撲殺事件が起きた。

 目撃証言によると、犯人「未詳40号」は背が高く、異様なくらい痩せていて、人込みでも目立つ。薄緑色の格子柄のスポーツジャケットを着て、アトランタ・ブレーブスのロゴ入り野球帽をかぶっていた。

 八四分署のパトロール警官から、捜査指揮官であるアメリア・サックスに連絡が入ったのは一時間ほど前。ブルックリンハイツ・プロムナード周辺を巡回中に容疑者に似た男を見かけたという。

 容疑者を追跡中のサックスが居合わせた買い物客でにぎわうショッピングセンターでエスカレーター事故が発生。エスカレーター終点の乗降板が開き、機械室に転落した男性が歯車巻きこまれた。サックスは、男性を救おうと試みるが、努力の甲斐なく、男性は死亡。

 偶発的な事故と思われたものの、調査を進めるうち、リンカーン・ライムは、これが単なる事故ではないことに気づいた。

 エスカレーターをはじめ、日常の至るところに存在するモノが突如、殺人マシンに変身して襲いかかってくる恐怖、 スマートコントローラー・システムにひそむ危険が物語の主題になっている。

 元疫学研究者でありライムのラボで働くインターンのジュリエット・アーチャーと、サックスの元恋人であり元刑事であったニック・カレッリが登場し、リンカーン・ライム・シリーズの新たなる展開が予感させられる。

訳者あとがき

2017年10月30日 第1刷

「スリーピング・ドール」 上・下 ジェフリー・ディーヴァー

「スリーピング・ドール」 上・下
著 者 ジェフリー・ディーヴァー
訳 者 池田真紀子
発行所 文春文庫


 リンカーン・ライム・シリーズ第7作「ウォッチメイカー」で登場したキネシクスの専門家キャサリン・ダンスが主人公の第1作。

 ダンスのホームグラウンド、カリフォルニア州モンテレー郡でカルト集団の元リーダー、ダニエル・ペルが脱獄した。ペルは八年前、シリコンヴァレーのある裕福な一家を末の娘一人を残して皆殺しにするという事件を起こし、終身刑を宣告され服役していた。

 ペルは釈放を間近に控えた受刑者の一人に接近し、娑婆に出たら、何年も前にとある井戸に犯罪の証拠を隠したが、万一それが発見されると、迷宮入りになっている農場主の殺人事件と自分が結びつけられるおそれがあるから、釈放されたら井戸からそれを回収してもらいたいと依頼した。

 しかし、釈放を控えた男は看守に密告し、看守はモンテレー郡保安官事務所に連絡した。そしてペルは、モンテレー郡で取り調べを受けるため、最も危険な重罪犯だけを収容する、ハイテクを駆使したスーパープリズン、キャピトーラ刑務所から、郡裁判所内の厳重に警備された取調室に移送された。

 大胆かつ緻密な計画が功を奏し、ペルは脱獄に成功。

 抜群の知能で追手を翻弄しながら、ペルの逃走が続く。

 終盤、ダンスと、FBI捜査官カルト犯罪のエキスパート、ウィンストン・ケロッグによる追跡劇、決着がついたかに見えるのだが、まだ100ページを残している。物語は二転。これで終わりと思わせながらも、まだ50ページ残っている。物語は三転。

 緊迫感に満ちた冒頭から、ハラハラドキドキの連続。
 読者は、ようやく安心して本書を閉じることができる。

 ダンスの部下、カリフォルニア州西中央支局捜査官TJ・スキャンロンが物語の展開にアクセントをつける魅力的な存在に仕上がっている。

訳者あとがき

解説 池上冬樹

2011年11月10日 第1刷



「スキン・コレクター」 ジェフリー・ディーヴァー

「スキン・コレクター」
著 者 ジェフリー・ディーヴァー
訳 者 池田真紀子
発行所 文藝春秋


 リンカーン・ライム・シリーズ第11作。

 リンカーン・ライム対ウオッチメイカー。

 猟奇的犯罪の陰にいたのはウオッチメイカーだった。刑務所に囚われていたウオッチメイカーが亡くなった。あれほどリンカーン・ライムをてこずらせたウオッチメイカーがそう簡単に亡くなるはずはないのだが。

 結果としてウオッチメイカーが刑務所に収監されながら、犯罪コンサルタントのような仕事を請け負っていたということか。著者自身がウオッチメイカーという特異なキャラクターを作りあげたという自負心があるからか、著者の思い入れがそのまま作品に現れてしまった。それが吉と出るか凶と出るか、それは読者に委ねられている。

 周到に練られた作品とみるか、蛇足に過ぎる作品とみるか、本作品対する世間の評価は二分しているかもしれない。個人的には、著者がウオッチメイカーに拘れば拘るほど、読者にとってリンカーン・ライム・シリーズを読み続ける面白みが半減していきそうな気がする。

 腹部に謎めいた文字を彫られた女性の死体が発見された。犯人はインクの代わりに毒物で刺青を刻み、被害者を毒殺した。

 現場で発見できた証拠物件はごくわずかだったが、犯人が残した紙片はニューヨークで起きた過去の連続殺人に関する書籍、ライムが解決したボーン・コレクター事件、の切れ端だった。

 犯人はボーン・コレクターの手口とライムの捜査手法を学び、殺人を繰り返しているようだ。次の犯行、次の被害者。次々と現れる被害者に彫られた文字の意味する内容は。スキン・コレクターの真の狙いを解くカギは証拠のなかにある。刺青の持つメッセージ性に注目することによって浮上するカルト集団の存在。

 「ボーン・コレクター」そして「ウォッチメイカー」の続篇に位置するような作品。

 アメリア・サックスによってサイコパスの魔の手から救い出された少女パム・ウィロビーが19歳の大学生として再び登場して、サックスとの確執を演じるのだが、それが本作品を構成する要素の一つとなっている。

訳者あとがき

2015年10月15日 第1刷

「コンビニ人間」 村田沙耶香

「コンビニ人間」
著 者 村田沙耶香 (むらた さやか)
発行所 文藝春秋


 他の人に共感できないことが発達障がいの一つであるなら、主人公の古倉恵子はそうなのかもしれない。もし、彼女の両親がそれに気づくことができていたなら、彼女の生き方もまた違うものになっていたかもしれないのだが、それが吉と出るか凶と出るか。

 古倉恵子、再生の物語。

 幼稚園のころ、公園で小鳥が死んでいたときのことである。「お父さん、焼き鳥好きだから、今日、これを焼いて食べよう」と言ったとき、母はぎょっとし、隣にいた他の子のお母さんもまた驚いたようなので、そうか、一羽じゃ足りないのだと思った。「もっととってきたほうがいい?」

 小学生のころ、男子が取っ組み合いのけんかをして騒ぎになったことがあった。「誰か止めて!」と悲鳴があがり、止めるのかと思った恵子は、そばの用具入れをあけ、スコップを取り出して、暴れる男子の頭を殴った。

 走ってきて、惨状を見て仰天した先生たちは説明を求めた。「止めろと言われたから、一番早そうな方法で止めました」。先生は戸惑った様子で、暴力は駄目だとしどろもどろになった。

 教室で女の先生がヒステリーを起こして教卓を出席簿で激しく叩きながらわめき散らし、皆が鳴き始めたときのこと、「先生、ごめんなさい!」「やめて、先生」皆が悲壮な様子で止めてと言っても収まらないので、先生に走り寄ってスカートとパンツを勢いよく下ろした。先生は仰天して泣きだし、静かになった。

 そのときもまた母が学校に呼び出され、帰り道、母は心細そうに呟いて、恵子を抱きしめた。何か悪いことをしてしまったらしいが、どうしてなのか、わからなかった。

 父母は困惑しながらも、恵子をかわいがった。父母が悲しんだり、いろんな人に謝ったりしなくてはいけないのは本意ではないので、家の外では必要なこと以外の言葉は喋らず、自分からは行動しないようにした。

 皆の真似をするか、誰かの指示に従う。

 転機が訪れたのは大学に入ったばかりのころだった。学校の行事で能を観た帰り、道に迷った恵子の発見したものが、コンビニの「オープニングスタッフ募集」のポスターだった。

 コンビニ店員歴18年、36歳独身の恵子の物語。

 白羽という、寄生虫そのものといっていいような、とんでもない駄目男が登場するのだが、彼の画策によって、恵子が自分の意思で発見する自分の居場所、それがコンビニという結末が感動的に描かれる。

 再びコンビニ店員として生き始める恵子が暗示されながら、もはや彼女は以前の彼女ではない。She is not what she was.

2016年7月30日 第1刷発行


[ 2019/01/10 01:00 ] 国内の作家の本 村田沙耶香 | TB(-) | CM(0)

「ゴースト・スナイパー」 ジェフリー・ディーヴァー

「ゴースト・スナイパー」
著 者 ジェフリー・ディーヴァー
訳 者 池田真紀子
発行所 文藝春秋


 リンカーン・ライム・シリーズ第10作。

 前作「バーニング・ワイヤー」終了間際に行われた手術によってリンカーン・ライムの右腕と右手の自由がほぼ取り戻されている。

 アメリカ政府を批判していた活動家ロバート・モレノがバハマで殺害された。2000メートルの距離からの狙撃。神業〝百万ドルの一弾〟による暗殺。

 その直後、ニューヨーク州地方検事補ナンス・ローレルとニューヨーク市警警部特捜部長ビル・マイヤーズがリンカーン・ライムのもとを訪れた。

 モレノ暗殺はアメリカの諜報機関の仕業、しかもテロリストとして消されたモレノは無罪だったという。ローレルは、この事件を法廷で裁くため、ライムとアメリア・サックスを特別捜査チームに引き入れる意図でライムのもとを訪れたのだった。

 スナイパーを割り出し、諜報機関の罪を暴くため、ライムとチームメイトは活動を開始した。しかし、現場に残された物的証拠はあまりにも乏しく、捜査は開始早々から難航する。そこで、ライム自身がバハマへ出向くことを決意。

 しかし、雇われた有能な殺し屋ジェイコブ・スワンは、謀略を隠蔽するため、事件に関わる情報を持っていると思われる人物を次々に殺害していく。殺し屋ジェイコブ・スワンが包丁さばきに長けた熱心な料理愛好家という人物設定はなかなか魅力的だが、それゆえに恐ろしさもまた倍増。

 まだ実行していないにも関わらず、テロリストの疑いがあるというだけで、自国民を政府が暗殺する行為は、法的・倫理的に許されるものなのか。カントの動機説、ベンサムの結果説。物語は最終的には結果説で落着するように展開するのだが、エンターテインメントとはいえ、哲学的な課題を提起する内容となっている。

訳者あとがき

2014年10月30日 第1刷

「舞妓さんちのまかないさん 6」 小山愛子

「舞妓さんちのまかないさん 6」
著 者 小山愛子
発行所 小学館


 初出は『週刊少年サンデー』2018年第10号~第20号に掲載。

 舞妓の世界をささえる裏方である「まかない」の日常を描き、主人公は女性。主人公と共に青森から上京し、目下売り出し中の舞妓もまた女性となれば、この漫画、従来の範疇で分類すると少女漫画。ところが連載しているのは「少年サンデー」という少年漫画の老舗。

 ジェンダーフリー。

 「少年サンデー」という従来少年誌とされてきた漫画雑誌は、編集方針として、従来の固定的な性別にとらわれていた観念を取り払ったのかもしれません。「少年サンデー」という伝統ある誌名を残しながらも掲載する漫画はすでに少年漫画、少女漫画という性差を取り払っているのかもしれない。

 ここまで書いたところでwikiを覗いてみると、「少年漫画誌の中では読者の年齢層が高く、高校生以上の読者が全体の約6割を占めている。更にラブコメや恋愛漫画に強みを持っているため、少年誌でありながら女性の購読者が非常に多いことでも知られている。そのためか、他の少年誌と比べて女性漫画家が多いのも特徴である。」とか。

 さにあらんや。近頃の少年漫画誌すべてがジェンダーフリーなのかと思いましたが、そうでもないようです。漫画界のジェンダーフリーが「少年サンデー」だけにに見られる特色ある傾向だとすれば、これからの時代を牽引するような性差にとらわれない漫画を期待できるのは「少年サンデー」なのかもしれません。

 キヨとすみれが上京してもうすぐ一年。屋形に新人の仕込みがやってくることになりました。初めて妹ができることになり、すみれは緊張を募らせます。その緊張を、毎日の食事でときほぐすのがキヨの仕事。

目 次
第53話 季節はめぐって
第54話 思えば、あの日。
第55話 あたらしい仕込みさん
第56話 花は人知れず
第57話 姉さんの呼び方
第58話 かご持ちの顔
第59話 彼女を形容するならば
第60話 キヨちゃんのケーキ(前篇)
第61話 キヨちゃんのケーキ(後篇)
第62話 ラッキーとアンラッキー
第63話 幼なじみの風景

2018年6月17日 初版第1刷発行

[ 2019/01/07 01:00 ] 国内の作家の本 小山愛子 | TB(-) | CM(0)
Amazon
プロフィール

きどのひつじ

Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
QRコード
QR
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ