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たとふれば猫かもしれず

見たり、読んだり、思ったり。

「スキン・コレクター」 ジェフリー・ディーヴァー

「スキン・コレクター」
著 者 ジェフリー・ディーヴァー
訳 者 池田真紀子
発行所 文藝春秋


 リンカーン・ライム・シリーズ第11作。

 リンカーン・ライム対ウオッチメイカー。

 猟奇的犯罪の陰にいたのはウオッチメイカーだった。刑務所に囚われていたウオッチメイカーが亡くなった。あれほどリンカーン・ライムをてこずらせたウオッチメイカーがそう簡単に亡くなるはずはないのだが。

 結果としてウオッチメイカーが刑務所に収監されながら、犯罪コンサルタントのような仕事を請け負っていたということか。著者自身がウオッチメイカーという特異なキャラクターを作りあげたという自負心があるからか、著者の思い入れがそのまま作品に現れてしまった。それが吉と出るか凶と出るか、それは読者に委ねられている。

 周到に練られた作品とみるか、蛇足に過ぎる作品とみるか、本作品対する世間の評価は二分しているかもしれない。個人的には、著者がウオッチメイカーに拘れば拘るほど、読者にとってリンカーン・ライム・シリーズを読み続ける面白みが半減していきそうな気がする。

 腹部に謎めいた文字を彫られた女性の死体が発見された。犯人はインクの代わりに毒物で刺青を刻み、被害者を毒殺した。

 現場で発見できた証拠物件はごくわずかだったが、犯人が残した紙片はニューヨークで起きた過去の連続殺人に関する書籍、ライムが解決したボーン・コレクター事件、の切れ端だった。

 犯人はボーン・コレクターの手口とライムの捜査手法を学び、殺人を繰り返しているようだ。次の犯行、次の被害者。次々と現れる被害者に彫られた文字の意味する内容は。スキン・コレクターの真の狙いを解くカギは証拠のなかにある。刺青の持つメッセージ性に注目することによって浮上するカルト集団の存在。

 「ボーン・コレクター」そして「ウォッチメイカー」の続篇に位置するような作品。

 アメリア・サックスによってサイコパスの魔の手から救い出された少女パム・ウィロビーが19歳の大学生として再び登場して、サックスとの確執を演じるのだが、それが本作品を構成する要素の一つとなっている。

訳者あとがき

2015年10月15日 第1刷

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「コンビニ人間」 村田沙耶香

「コンビニ人間」
著 者 村田沙耶香 (むらた さやか)
発行所 文藝春秋


 他の人に共感できないことが発達障がいの一つであるなら、主人公の古倉恵子はそうなのかもしれない。もし、彼女の両親がそれに気づくことができていたなら、彼女の生き方もまた違うものになっていたかもしれないのだが、それが吉と出るか凶と出るか。

 古倉恵子、再生の物語。

 幼稚園のころ、公園で小鳥が死んでいたときのことである。「お父さん、焼き鳥好きだから、今日、これを焼いて食べよう」と言ったとき、母はぎょっとし、隣にいた他の子のお母さんもまた驚いたようなので、そうか、一羽じゃ足りないのだと思った。「もっととってきたほうがいい?」

 小学生のころ、男子が取っ組み合いのけんかをして騒ぎになったことがあった。「誰か止めて!」と悲鳴があがり、止めるのかと思った恵子は、そばの用具入れをあけ、スコップを取り出して、暴れる男子の頭を殴った。

 走ってきて、惨状を見て仰天した先生たちは説明を求めた。「止めろと言われたから、一番早そうな方法で止めました」。先生は戸惑った様子で、暴力は駄目だとしどろもどろになった。

 教室で女の先生がヒステリーを起こして教卓を出席簿で激しく叩きながらわめき散らし、皆が鳴き始めたときのこと、「先生、ごめんなさい!」「やめて、先生」皆が悲壮な様子で止めてと言っても収まらないので、先生に走り寄ってスカートとパンツを勢いよく下ろした。先生は仰天して泣きだし、静かになった。

 そのときもまた母が学校に呼び出され、帰り道、母は心細そうに呟いて、恵子を抱きしめた。何か悪いことをしてしまったらしいが、どうしてなのか、わからなかった。

 父母は困惑しながらも、恵子をかわいがった。父母が悲しんだり、いろんな人に謝ったりしなくてはいけないのは本意ではないので、家の外では必要なこと以外の言葉は喋らず、自分からは行動しないようにした。

 皆の真似をするか、誰かの指示に従う。

 転機が訪れたのは大学に入ったばかりのころだった。学校の行事で能を観た帰り、道に迷った恵子の発見したものが、コンビニの「オープニングスタッフ募集」のポスターだった。

 コンビニ店員歴18年、36歳独身の恵子の物語。

 白羽という、寄生虫そのものといっていいような、とんでもない駄目男が登場するのだが、彼の画策によって、恵子が自分の意思で発見する自分の居場所、それがコンビニという結末が感動的に描かれる。

 再びコンビニ店員として生き始める恵子が暗示されながら、もはや彼女は以前の彼女ではない。She is not what she was.

2016年7月30日 第1刷発行


[ 2019/01/10 01:00 ] 国内の作家の本 村田沙耶香 | TB(-) | CM(0)

「ゴースト・スナイパー」 ジェフリー・ディーヴァー

「ゴースト・スナイパー」
著 者 ジェフリー・ディーヴァー
訳 者 池田真紀子
発行所 文藝春秋


 リンカーン・ライム・シリーズ第10作。

 前作「バーニング・ワイヤー」終了間際に行われた手術によってリンカーン・ライムの右腕と右手の自由がほぼ取り戻されている。

 アメリカ政府を批判していた活動家ロバート・モレノがバハマで殺害された。2000メートルの距離からの狙撃。神業〝百万ドルの一弾〟による暗殺。

 その直後、ニューヨーク州地方検事補ナンス・ローレルとニューヨーク市警警部特捜部長ビル・マイヤーズがリンカーン・ライムのもとを訪れた。

 モレノ暗殺はアメリカの諜報機関の仕業、しかもテロリストとして消されたモレノは無罪だったという。ローレルは、この事件を法廷で裁くため、ライムとアメリア・サックスを特別捜査チームに引き入れる意図でライムのもとを訪れたのだった。

 スナイパーを割り出し、諜報機関の罪を暴くため、ライムとチームメイトは活動を開始した。しかし、現場に残された物的証拠はあまりにも乏しく、捜査は開始早々から難航する。そこで、ライム自身がバハマへ出向くことを決意。

 しかし、雇われた有能な殺し屋ジェイコブ・スワンは、謀略を隠蔽するため、事件に関わる情報を持っていると思われる人物を次々に殺害していく。殺し屋ジェイコブ・スワンが包丁さばきに長けた熱心な料理愛好家という人物設定はなかなか魅力的だが、それゆえに恐ろしさもまた倍増。

 まだ実行していないにも関わらず、テロリストの疑いがあるというだけで、自国民を政府が暗殺する行為は、法的・倫理的に許されるものなのか。カントの動機説、ベンサムの結果説。物語は最終的には結果説で落着するように展開するのだが、エンターテインメントとはいえ、哲学的な課題を提起する内容となっている。

訳者あとがき

2014年10月30日 第1刷

「舞妓さんちのまかないさん 6」 小山愛子

「舞妓さんちのまかないさん 6」
著 者 小山愛子
発行所 小学館


 初出は『週刊少年サンデー』2018年第10号~第20号に掲載。

 舞妓の世界をささえる裏方である「まかない」の日常を描き、主人公は女性。主人公と共に青森から上京し、目下売り出し中の舞妓もまた女性となれば、この漫画、従来の範疇で分類すると少女漫画。ところが連載しているのは「少年サンデー」という少年漫画の老舗。

 ジェンダーフリー。

 「少年サンデー」という従来少年誌とされてきた漫画雑誌は、編集方針として、従来の固定的な性別にとらわれていた観念を取り払ったのかもしれません。「少年サンデー」という伝統ある誌名を残しながらも掲載する漫画はすでに少年漫画、少女漫画という性差を取り払っているのかもしれない。

 ここまで書いたところでwikiを覗いてみると、「少年漫画誌の中では読者の年齢層が高く、高校生以上の読者が全体の約6割を占めている。更にラブコメや恋愛漫画に強みを持っているため、少年誌でありながら女性の購読者が非常に多いことでも知られている。そのためか、他の少年誌と比べて女性漫画家が多いのも特徴である。」とか。

 さにあらんや。近頃の少年漫画誌すべてがジェンダーフリーなのかと思いましたが、そうでもないようです。漫画界のジェンダーフリーが「少年サンデー」だけにに見られる特色ある傾向だとすれば、これからの時代を牽引するような性差にとらわれない漫画を期待できるのは「少年サンデー」なのかもしれません。

 キヨとすみれが上京してもうすぐ一年。屋形に新人の仕込みがやってくることになりました。初めて妹ができることになり、すみれは緊張を募らせます。その緊張を、毎日の食事でときほぐすのがキヨの仕事。

目 次
第53話 季節はめぐって
第54話 思えば、あの日。
第55話 あたらしい仕込みさん
第56話 花は人知れず
第57話 姉さんの呼び方
第58話 かご持ちの顔
第59話 彼女を形容するならば
第60話 キヨちゃんのケーキ(前篇)
第61話 キヨちゃんのケーキ(後篇)
第62話 ラッキーとアンラッキー
第63話 幼なじみの風景

2018年6月17日 初版第1刷発行

[ 2019/01/07 01:00 ] 国内の作家の本 小山愛子 | TB(-) | CM(0)

「舞妓さんちのまかないさん 5」 小山愛子

「舞妓さんちのまかないさん 5」
著 者 小山愛子
発行所 小学館


 初出は『週刊少年サンデー』2017年第49号~2018年第9号に掲載。

 「百はな」は舞妓としてのすみれの名前。義理の姉・百子さん姉さんが「旅行、行ってくるから」とすみれに任せた仕事が猫の世話。屋形に帰ったすみれがテレビで垣間見た京都マラソンの中継。百子さん姉さんが出てはる。

 すみれはキヨ手作りの差し入れ弁当を持ってマラソンのゴール地点へ。「や、助かるわあ。この後すぐお座敷やから、食べときたかってん」と言う百子に、「え!? お座敷!? 今フルマラソン走りはったのに!? 」と驚くすみれ。

 「お座敷で、ええパフォーマンスするために、こうして必死に体力づくりしとんのやから。」

 舞妓になれず、屋形のまかないさんとして働くことになったキヨ。青森から一緒に上京した同級生のすみれは、逸材として期待をかけられ、舞妓・百はなとして修練の毎日。京都での生活に馴染みつつも、ふたりの共通の思い出は幼いころの青森。運動会の思い出。

 舞妓のお休みは月に二回。くつをはいて、洋服を着て、髪をおろして、普通の女の子に戻る。

目 次
第42話 百はな、おるすばんをする
第43話 必死な妹と、その姉
第44話 キリっと、一日。
第45話 キヨちゃんはいつも通り
第46話 献立は検討中
第47話 キヨちゃんの好きなもの
第48話 すーちゃんの望むこと
第49話 みんなの好きなもの
第50話 お休みギョウザ
第51話 すーちゃんのお休みの日(前篇)
第52話 すーちゃんのお休みの日(後篇)

2018年4月17日 初版第1刷発行

[ 2019/01/06 01:00 ] 国内の作家の本 小山愛子 | TB(-) | CM(0)

「舞妓さんちのまかないさん 4」 小山愛子

「舞妓さんちのまかないさん 4」
著 者 小山愛子
発行所 小学館


 初出は『週刊少年サンデー』2017年第37・38号合併号~第48号に掲載。

 屋形のまかないさんとして働くキヨにとっても、寒い季節。青森から持ってきた湯たんぽを抱えながら、「今日は冷えるなぁ」とひとりつぶやく。屋形の女将さんが持ち帰ったのは「そこのお姉さんにもらった」という立派な牛肉。

 舞妓たち全員がそろったお昼どき。屋形のなかは外と変わらない温度。「エアコンも、おこたも、つかへん・・・」 停電だった。キヨが支度したお昼ごはんは、体の温もるしゃぶしゃぶだった。

 正月やら何やら色々あって疲れがたまったからか、女将さんが風邪に。京都では、体をこわしたときに食べたいものといえば、うどんだという。キヨが京都のうどんに初挑戦。

 できあがったのは、甘いおあげとすき通ったおつゆが弱った体にしみわたる「キヨちゃん風京風うどん」。

 故郷・青森での料理はじめは、祖母から戒められていた「一人で火使ったらダメ」「一人で包丁使ったダメ」を守って作った焼きりんご。

 キヨとすみれの回想に、幼馴染の健太をまじえての文化祭の思い出がよみがえる。華やかな花街の舞台裏。変わらぬ二人の友情と温かな人間模様。

目 次
第31話 あったかいお昼
第32話 ご挨拶回り
第33話 風邪の日は
第34話 キヨちゃんのお料理はじめ
第35話 もうひとがんばりの夜
第36話 今日もあの時も
第37話 はりきりすーちゃん
第38話 豆まき百景
第39話 お気張りの飲みもの
第40話 おねがいごはん
第41話 みんなのチョコ

2017年12月17日 初版第1刷発行

[ 2019/01/05 19:00 ] 国内の作家の本 小山愛子 | TB(-) | CM(0)

「舞妓さんちのまかないさん 3」 小山愛子

「舞妓さんちのまかないさん 3」
著 者 小山愛子
発行所 小学館


 初出は『週刊少年サンデー』2017年第26号~第36号に掲載。

 舞妓になることはできなかったけれども、キヨの料理の腕は故郷の祖母仕込み。屋形のまかないさんとして、身につけた料理の腕、創意工夫を発揮する。

 いっぽう、キヨと一緒に青森から上京してきた同級生のすみれは、踊りの師匠から「100年に一度の逸材」と評され、同期のなかでもいち早く舞妓デビューを果たした。

 変わらぬ二人の友情と温かな人間模様を心おきなく堪能できる。

 屋形で共同生活をする舞妓にとって、手紙は日常的に使うツール。彼女たちはケータイもパソコンも持たない。祖母はキヨから正月に青森へ帰るという手紙を受けとった。キヨとすみれ、そして幼馴染で同級生だった健太との三人のお正月。

目 次
第20話 夢の一枚
第21話 今日は何曜日?
第22話 おたよりを待つひと
第23話 花街のクリスマス
第24話 花街の大みそか
第25話 帰郷1日目
第26話 初詣へ
第27話 再び京都へ
第28話 仕事始めの日
第29話 始業式
第30話 白い鳩

2017年9月17日 初版第1刷発行

[ 2019/01/05 16:00 ] 国内の作家の本 小山愛子 | TB(-) | CM(0)
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きどのひつじ

Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

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