たとふれば猫かもしれず

見たり、読んだり、思ったり。

秋吉理香子 「暗黒女子」

「暗黒女子」
著 者 秋吉理香子(あきよし りかこ)
発行所 双葉社


 秋吉理香子の作品で最初に読んだのは「ジゼル」。他の作品も読んでみようと思い二冊目に選んだのが「暗黒女子」。

もくじ

第六十一回 聖母女子高等学院文学サークル定例会次第
1.開会のおあいさつ及び闇鍋ルールの説明 会長・澄川小百合
2.朗読小説「居場所」 1年A組 二谷美礼
3.朗読小説「マカロナージュ」 2年B組 小南あかね
4.朗読小説「春のバルカン」 留学生 ディアナ・デチェヴァ
5.朗読小説「ラミアーの宴」 3年B組 古賀園子
6.朗読小説「天空神の去勢」 2年C組 高岡志夜
7.朗読小説「死者の呟き」 前会長・白石いつみ 代理朗読・澄川小百合
8.閉会のごあいさつ 会長・澄川小百合

 白石いつみがテラスの下の花壇に血にまみれてうつぶせで倒れていたのは一週間前。今日は各自が一編の小説を仕上げて持ち寄り、それぞれの小説を聞く聖母女子学院文学サークル定例会の日。

 今回のテーマは、前会長である白石いつみの死。

 各自が仕上げてきた小説の内容は、各自が白石いつみと親しく交際するようになったきっかけと関わり、白石いつみに対する称賛のことば、そして白石いつみに悪意を抱くと思われるサークル員に対する罵り。

 二谷美礼にはじまり高岡志夜に至る朗読小説によって提示される理想的存在としての白石いつみ像。まさに非の打ちどころのない存在としての白石いつみが示される。

 そして白石いつみの朗読小説「死者の呟き」。

 白石いつみが二谷美礼らを彼女が主催する文学サークルに誘った真の理由と顧問である北条との関係が明らかにされる。そうだったのかと納得しながら読み進める朗読小説「死者のつぶやき」。そして最後のどんでん返しが最終章「閉会のごあいさつ」。

 読みどころは第7章「死者の呟き」と第8章「閉会のごあいさつ」。

 内容的に気になる箇所がいくつか。

 例えば聖母女子学院が「もともとイギリスの修道女が戦後に来日し、キリスト教精神を礎とした女子教育を行う目的で創立した学校」という設定。修道女あるいは修道院といえばカトリック。イギリスはイギリス国教会、プロテスタントが主流と思われる国。
など・・・。

2013年6月23日 第1刷発行




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[ 2018/02/18 21:00 ] 国内の作家の本 秋吉理香子 | TB(-) | CM(-)

澤田瞳子 「師走の扶持 京都鷹ヶ峰御薬園日録」

「師走の扶持 京都鷹ヶ峰御薬園日録」
著 者 澤田瞳子(さわだとうこ)
発行所 徳間書店


 「ふたり女房 京都鷹ヶ峰御薬園日録」の続編。
 短編連作六話。

 幕命を受け常房総三州で薬草を採取するという本草学の大家・小野蘭山の二か月に及ぶ長旅に同行した元岡真葛は蘭山宅の広間で蘭山の弟子たちとともに採取した薬草の分類作業に没頭していた。

 京に向けて江戸を出発するのは二十日余り後。その間に江戸にあるほうぼうの御薬園を訪ねようと算段していた真葛は作業の合間を縫って小石川御薬園を訪ねる。そこで遭遇した事件を題材とした「糸瓜の水」。

 真葛が帰洛の途についたのは五月上旬。同道するのは、長年、蘭山の荷持ちを務めてきたが、今年七十歳を迎えたのを機に暇を取り、伏見の娘のもとに身を寄せることにした喜太郎。

 宿泊を決めたのは東海道、熱田神社の門前町、宮宿。そこで遭遇する出来事を描いた「瘡守」。

 表題作「師走の扶持」。

 二十年にわたり毎年の師走に、真葛の食い扶持として米一俵と味噌一樽を届けてくるばかりの亡き母の生家棚倉家。棚倉家の実情と祖父静晟の心情を真葛が知る「師走の扶持」。

 口には出さねど、真葛をはじめとして御薬園の者はみな、父元岡元岡玄已は西国に赴く途中、不慮の事故に遭ったのだと考えていたのだが、棚倉静晟だけは玄已がどこかで生きていると信じ続けているという。

 続編が書き続けられそうな気配。
 期待しましょう。

目 次

糸瓜(へちま)の水
瘡守(かさもり)
終(つい)の小庭
撫子(なでしこ)ひともと
ふたおもて
師走(しわす)の扶持(ふち)

2015年11月30日 初刷

[ 2018/02/17 16:00 ] 国内の作家の本 澤田瞳子 | TB(-) | CM(-)

澤田瞳子 「ふたり女房 京都鷹ヶ峰御薬園日録」

「ふたり女房 京都鷹ヶ峰御薬園日」
著 者 澤田瞳子(さわだとうこ)
発行所 徳間書店


 主人公は、鷹ヶ峰御薬園で働く二十一歳の元岡真葛。
 短編連作六話。

 父・元岡玄已は母・倫子が急病で息を引き取った後、真葛を友人の藤林信太夫に預けて長崎へ向かった。しかし便り一つ寄越さず、生死不明となって十余年。真葛は鷹ヶ峰御薬園を預かる藤林家のもとで育てられた。

 時代背景は光格天皇のころ。

 当今・兼仁(光格天皇)は、閑院宮典仁親王の第六皇子。早世した後桃園天皇の後嗣として帝位についた彼は、近代稀に見る復古派の天皇であった。(第六話 粥杖打ち)

 光格天皇が即位したのは1779年。1787年に松平定信が老中首座に任じられ寛政の改革が始められた。外交関係については、1792年にラクスマンが大黒屋光太夫を伴って根室に来航し通商を求めている。伊能忠敬が蝦夷地測量のために江戸を出発したのは1800年。

 第六話。

 幕命を受けた本草学の大家・小野蘭山をはじめとした総勢十五、六名が三月半ばより、房州及び総州にて薬物の採取を行なうという。粥杖打ちから帰宅した真葛は思いがけず、その高弟・延島杳山から同道の誘いを受ける。

 長崎遊学に向かった父・元岡玄已と別れ、鷹ヶ峰に預けられた三歳の冬以来、京を出たことのない真葛にとって新たなる出発のとき。

第一話 人待ちの冬
第二話 春愁悲仏
第三話 為朝さま御宿
第四話 ふたり女房
第五話 初雪の坂
第六話 粥杖打ち

2013年5月31日 初刷

[ 2018/02/15 18:00 ] 国内の作家の本 澤田瞳子 | TB(-) | CM(-)

秋吉理香子 「ジゼル」

「ジゼル」
著 者 秋吉理香子(あきよし りかこ)
発行所 小学館


[ジゼル]Giselle
ロマンティック・バレエの代表作。
男性に騙され、結婚直前に亡くなった娘たちが妖精ウィリとなり、第二幕では夜の森に迷い込んだ男性を死ぬまで踊らせる。主人公が死に装束で踊る唯一のバレエ作品。

 バレエ・ミステリー。

 究極のどんでん返し。

 ジゼルしか踊ることなく十六歳で亡くなった「幻のバレリーナ」姫宮真由美。読者にとっては、何気なく読み始め、思いがけず姫宮真由美死去の謎、その探索に直面させられてしまうことへの戸惑い。その戸惑いが、最終章「カーテンコール」によって鮮やかに払拭させられる。そして、そうだったのかという満足感と共に読み終えることができた。

 如月花音が所属する東京グランド・バレエ団の設立記念公演の演目は十五年間封印されてきた「ジゼル」だった。バレエ団が設立当初に「ジゼル」公演がからんだある事件を起こし、それ以来公演を自粛しているという。

 その理由とは。

2017年10月1日 初版第1刷発行

[ 2018/02/14 21:00 ] 国内の作家の本 秋吉理香子 | TB(-) | CM(-)

宮城谷昌光 「重耳」 上・中・下

「重耳」 上・中・下
著 者 宮城谷昌光(みやぎたに まさみつ)
発行所 講談社文庫


 中国の春秋時代、武公(称)、献公(詭諸)、文公(重耳)の三代に題材をとった物語。黄土高原の小国曲沃の君主・称の孫が重耳。称の死後晋の君主となった詭諸は、絶世の美女驪姫に溺れ、奸計に嵌まって重耳たち公子を殺そうと謀る。逃れ出た重耳と家臣たちの辛酸の日々。

 晋の内乱が鎮静し、重耳の弟夷吾が素早く君主に納まったが、人心は集まらず、重耳の帰国が切望された。刺客の魔手を逃れながら、飢えと屈辱の、十九年一万里の流浪の末、帰国した重耳は晋を再建。やがて天下の覇権を握り、斉の桓公と並んで斉桓晋文と称され、春秋五覇の代表格とされる。

 抜群の面白さ。

 重耳を巡る人々の何とも魅力的なこと。なかでも上巻の掉尾を飾るのは二、三十人の兵で虢軍に戦いをいどむ孤突。その静かなる剛毅。ページをめくる指先がもどかしい。

 下巻に載せられている解説は、秋山駿「大器の出現」。
 彼の解説を引用すると、

 『重耳』の上巻を読むと、その面白さにつられて、中巻が出るのを私は首を長くして待った。中巻を読むと、また下巻が出るのを首を長くして待った。
 一気に読んだのではなかったので、上、中、下巻には、根底は同じだが、それぞれ微妙に色合いの異なる面白味が漂うように感ぜられた。

重耳(上)1996年9月15日 第1刷発行
重耳(中)1996年9月15日 第1刷発行
重耳(下)1996年9月15日 第1刷発行





[ 2018/02/12 15:00 ] 国内の作家の本 宮城谷昌光 | TB(-) | CM(-)

澤田瞳子 「若冲」

「若冲」
著 者 澤田瞳子(さわだとうこ)
発行所 文藝春秋


 若冲を主人公に据えた短編連作集、全八篇。
 初出は2013年から2015年にかけてのオール読物。

 若冲の生涯、その時々に題材を得ながら、池大雅、円山応挙、与謝蕪村、谷文晁、市川君圭など京都を活動の拠点とした他の画人たちとの関りにまで筆は及ぶ。

 これら画人のなかでも、若冲にとって生涯因縁のライバルとなる市川君圭は本当に実在した人物なのか。「デジタル版 日本人名大辞典+Plus」によると、江戸時代中期-後期の画家として確かに存在していた。近江出身。通称は弁蔵。

 そういってもと思いながらネット上を検索すると、「NEWSポストセブン」に【著者に訊け】澤田瞳子氏 天才画人の生涯描く小説『若冲』がありました。

 市川君圭、実在した人物ではあるけれども、若冲との関係は著者の創作だったようです。創作だからこその面白さ。よくぞこんな物語を拵えたものです。著者に喝采。

 伊藤若冲 1716年~1800年

 本書巻頭の作品は『鳴鶴』。絵を描く源左衛門(若冲)は四十歳。『芭蕉の夢』の時代背景は宝暦事件(1758年)。本書「若冲」の時代背景は田沼意次の政治、寛政の改革が行われた頃。それぞれの時代の有様を小説に取り入れながら臨場感たっぷりの仕上がり。そしてまた作中人物たちに対する著者の思い入れもまたたっぷり。小説ならではの賜物。

 全八篇のうち、特にオモシロ楽しく読んだのは、『つくも神』。この作品をジャンル分けするとすればミステリー、推理小説。探偵役を担うのは中井清太夫。後の回でも登場する中井清太夫、なかなか重要な役どころを担当する。

2015年4月25日 第1刷発行

[ 2018/02/05 14:00 ] 国内の作家の本 澤田瞳子 | TB(-) | CM(-)

折原 一 「沈黙の教室」

「沈黙の教室」
著 者 折原 一 (おりはら いち)
発行所 早川書房


 日本推理作家協会賞受賞作。

 文庫本ながら総ページ数697ページ。何と分厚い文庫本と一瞬ひるみそうになったが、読み始めるや否やあっという間に折原一の紡ぎだす物語に引きずり込まれてしまった。本書の単行本での発刊は1994年。著者の生年が1951年だから折原一43歳の頃の作品。

 物語は視点を変えながら三部構成で展開される。三分割されることによって、読者もまた視点を変えながら惰性に流されることなく心機一転、物語世界に浸ることができるような展開。

 プロローグ
第一部 粛清の教室
第二部 懐かしき友よ
第三部 さらば、友よ
 エピローグ

 裏表紙に載せられた紹介文には、

青葉ヶ丘中学3年A組―――悪魔の
ようなこのクラスを、担任教師が
名づけて〈沈黙の教室〉。何者か
が不気味な恐怖新聞を発行し、つ
ぎつぎと粛清の対象を指名してい
く。そして行なわれる残酷ないじ
め。やがて20年がたち、クラスの
同窓会の告知が新聞に載った時、
報復を誓う者による大量殺人計画
がひそやかに進行しはじめた!
めくるめく多重構造の謎と、じわ
じわと忍びよる恐怖。日本推理作
家協会賞長篇賞に輝くサスペンス

 第一部は、突発的な事故で記憶を失った神崎一郎の現在の物語とかつて青葉ヶ丘中学に赴任し早々と3年生の学級担任をつとめることになった教師の過去の物語が交互に展開される。その間に時おり差し挟まれる『恐怖新聞』の制作者は誰なのか。そしてその内容の信憑性が第一部のキーポイント。ナレーション的な働きをする『恐怖新聞』があることによって読者はより一層物語に引き込まれることになる。

 第二部。かつての3年A組の生徒たちに恨みを抱く人物、卒業生のひとり秋葉拓麿が計画した同窓会開催計画に悪意を持って関わり始める。この復讐計画の実行犯は誰か。

 第三部、意外な展開。
 そしてエピローグ。

 たいそう分厚い文庫本ながら、あっという間に読み終えてしまった。

1997年5月15日 初版発行

[ 2018/02/01 13:00 ] 国内の作家の本 折原一 | TB(-) | CM(-)
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きどのひつじ

Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

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