たとふれば猫かもしれず

見たり、読んだり、思ったり。

「しあわせの牛乳」 著・佐藤慧 / 写真・安田菜津紀

「しあわせの牛乳」
 ポプラ社ノンフィクション30 ~生きかた~
著 者 佐藤 慧 (さとう けい)
写 真 安田菜津紀 (やすだ なつき)
発行所 ポプラ社


「こんなにおいしい牛乳は飲んだことがない!」
「まるで牛乳じゃないみたい!」

 「なかほら牧場」があるのは岩手県北部の山の中。

 山全体が牧場となっている「なかほら牧場」では、牛たちはせまい牛舎に押しこめられることもなく、自分でえさを探し、自然の草を食べて暮らしている。

 ほかの牧場とはちがい、「放牧酪農」をおこなっている。

 「なかほら牧場」の牧場長は、中洞正(なかほら ただし)さん。

 写真と文章で紹介する中洞正さんの生き方。

もくじ
プロローグ 牛が自由に生きる牧場
第1章 おれは牛飼いになる!
第2章 山地酪農
第3章 理想の酪農
第4章 しあわせの牛乳
あとがき

2018年3月 第1刷

スポンサーサイト
[ 2018/06/24 21:00 ] 生き方の本 佐藤慧 | TB(-) | CM(0)

「緑衣の女」 アーナルデュル・インドリダソン

「緑衣の女」
著 者 アーナルデュル・インドリダソン
訳 者 柳沢由実子
発行所 東京創元社


 アイスランドの北欧ミステリ。
 2003年、ガラスの鍵賞。
 2005年、英国推理作家協会賞(CWA)ゴールドダガー賞。

 アイスランド警察の犯罪捜査官エーレンデュルを主役にしたシリーズの第四作。

 八歳の男の子の誕生パーティーが開かれている。床を這いまわっている赤ん坊がしゃぶっているのは人の骨だった。住宅建設地で発見された人間の肋骨の一部。それを見つけた男の子はつるつるしたきれいな石だと思い、家に持ち帰ったという。

 事件にしろ、事故にしろ、最近埋められたものではない。その骨の古さは、六十年から七十年はたっている。通報を受けて現場に駆けつけたエーレンデュルは、同僚のエリンボルク、シグルデュル=オーリと共に捜査に乗り出す。

 現場近くにはかつてサマーハウスがあり、付近にはイギリス軍やアメリカ軍のバラックもあったらしい。住民の証言に現れる緑の服の女。数十年の間、封印されていた事件が明らかにされていく。

 物語は三つの方向から語られる。一つは土の中に埋められていた骨の主の正体を追う現在の物語。二つ目は、エーレンデュルの娘エヴァ=リンドの危機をきっかけに語られるエーレンデュルの過去。三つ目は、骨の主をめぐるある家族のドメスティック・バイオレンス。

 訳者である柳沢由実子は、はじめて本書を読んだとき、閉ざされた家の中で夫が妻に向かって振るう激しい暴力シーンのあまりのすさまじさに愕然とし、これを読んで模倣する愚かな人間が出てくるのではないかと不安になり、これを世に出していいのだろうかという問いが心に生じたという。

訳者あとがき

2013年7月12日 初版

「白い雌ライオン」 ヘニング・マンケル

「白い雌ライオン」
著 者 ヘニング・マンケル
訳 者 柳沢由実子
発行所 創元推理文庫


 刑事クルト・ヴァランダーが活躍するスウェーデンの警察小説シリーズの第三弾。

 同時進行する二つの物語。
 田舎町イースタの警察官の物語と南アフリカ共和国で進められる謀略。

 中学校で使用されている地理的分野の教科書から南アフリカ共和国についての記述を引用すると、

 南アフリカ共和国は、アフリカ大陸の一番南に位置し、気候が温暖で、経済的に豊かな国です。しかし長期間、アパルトヘイト(人種隔離政策)によって、少数の白人が多数の黒人を支配してきた歴史があります。人種が異なる人との結婚は禁じられ、住む場所も人種によって決められていました。1994年に全人種が参加する選挙が行われ、黒人のネルソン・マンデラ氏が大統領になると、ようやくアパルトヘイトは廃止されました。異なる人種どうしの和解や協調、経済格差の見直しを進めていますが、現在でも、黒人と白人との貧富の差は残っています。(帝国書院「社会科 中学生の地理」平成30年1月20日発行)

 デクラーク大統領が1991年2月の国会演説でアパルトヘイト政策の廃止を宣言した後、1994年4月の総選挙実施まで南アフリカ共和国では危機的な混乱が続き、多くの死者を出した。

 本書「Den vita lejoninnan」が出版されたのは、1993年。

 南アフリカ共和国の混乱を背景として物語は進行する。

 体制維持を目論むボーア人による秘密結社がアパルトヘイト政策を存続させるために立てた計画はネルソン・マンデラ暗殺。

 暗殺計画を遂行するために選ばれたコーディネーターは失業中の元KGB諜報員だったロシア人。秘密結社によって、南アフリカ共和国でリクルートされた暗殺者候補が向かったのはサンクトペテルブルク。彼らは合流の後、列車でフィンランドへ行き、そこからスウェーデンへ向かう手筈が整えられていた。

 スウェーデンの田舎町で、不動産業者の女性が行方不明になった。失踪か、それとも事件か、事故か。ヴァランダー警部らは彼女の足取りを追い、最後に向かった売家へ急いだ。ところがその近くで謎の空き家が爆発炎上。焼け跡から発見されたのは、黒人の指と南アフリカ製の銃、ロシア製の通信装置だった。

 文庫本ながら、総ページ数716ページ。
 スウェーデンとロシア、南アフリカ共和国を結ぶ壮大でスリリングな物語。

解説 吉野 仁

2004年9月30日 初版

「死刑囚」 アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム

「死刑囚」
著 者 アンデシュ・ルースルンド
    ベリエ・ヘルストレム
訳 者 ヘレンハルメ美穂
発行所 武田ランダムハウスジャパン


 ストックホルム市警エーヴェルト・グレーンス警部が主人公として活躍するシリーズ第三作。

 『ボックス21』の続編。

 ある冬の日、フィンランドからストックホルムへ向かう船内で暴力をふるい、傷害容疑で逮捕されたカナダ国籍の男は、無実を訴えながらも死刑の宣告を受け、死刑執行を目前にしながらアメリカの刑務所で病死したはずの男だった。

 米国での判決に疑問をいだき始めたストックホルム市警エーヴェルト・グレーンス警部らの面々だったが、事件は外交問題として決着させられてしまう。

 再び死刑執行へのカウントダウン。
 どんでん返しが起こるのかとドキドキしながら読み進めながらも、最終的に、死刑は執行されてしまう。

 十七歳のジョン・マイヤー・フライが十六歳のエリザベスを殺害したとされている事件の真相が、後日談のように明らかにされていく。

 死刑制度について、作者が、小説の登場人物であるスヴェン・スンドクヴィストと息子のヨーナスに語らせる会話が印象的だった。

「その子のパパはね、べつの国に住んでるんだ。アメリカって知ってるだろう。アメリカには、その子のパパが人を殺したと思ってる人がたくさんいる。で、アメリカでは・・・・・人を殺した人は、逆に殺されることになってるんだ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「よくわかんない」
「パパもだよ」
「だれが殺すの?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「国家。国だよ。これ以上うまく説明できない」
「その子のパパを殺すって、だれが決めるの?  だれかが殺すって決めるんだよね?」
「陪審員と、判事だよ。テレビで見たことあるだろう、裁判の場面」
「陪審員?」
「ああ」
「それと、判事?」
「ああ」
「それって、人間?」
「そうだよ。人間だ。普通の人間だよ」
「じゃあ、その人たちはだれが殺すの?」
「その人たちは殺されないんだ」
「でも、その人たち、人を殺すって決めるんでしょ。そしたら、人を殺すのと同じことだよ。人を殺したら、殺されることになってるんだよね。だれがその人たちを殺すの? よくわかんないよ、パパ」
(469ページ~471ページ)

 訳者あとがき。

2011年1月10日 第1刷発行

藤沢周平 「喜多川歌麿女絵草紙」

「喜多川歌麿女絵草紙」
著 者 藤沢周平 (ふじさわ しゅうへい)
発行所 文春文庫


 浮世絵師喜多川歌麿が主人公の連作6篇を収める。

「さくら花散る」
 おこんは亭主持ちだった。病気で寝ているが、女房が歌麿に絵を描いてもらうことを喜んでいるという。

「梅雨降る町で」
 おくらは早く身を固めたがっていた。おくらと所帯を持ちたいという男は沢山いた。そういうつき合いが出来ると、おくらはいい人が見つかった、と大騒ぎするのだが、不思議なほど長続きはしなかった。

「蜩の朝」
 「おい、ちょっと」。歌麿はお糸を探しているという男にいきなり乱暴な声をかけられた。男の身なりは悪くはなかった。歳のころは二十七、八。眼つきが鋭いところをのぞけば、商家の手代といっても通りそうな男だった。

「赤い鱗雲」
 湯島天神の境内ではじめて会ったとき、茶屋の中で、人眼もはばからず泣いていたお品は、やがて日が翳ると立ち上がった。打ちひしがれたような後ろ姿を見送っているうちに、歌麿はどうにかして、その女を絵にしてみたい衝動に駆りたてられて、後をつけた。

「霧にひとり」
 酒をつぎながら、自分からは何も口をはさもうとしないおさとは、ひどく無口な感じがした。黒眸の大きい少し下ぶくれの顔は、可愛い感じはしても、女の稔りにはほど遠い稚い感じが残っているのだが、おさとがみせた盃のあけっぷりは、一瞬なまめかしく歌麿の眼をひきつけた。

「夜に凍えて」
 歌麿は常盤町裏の迷路のような小路に入り込んで行った。歌麿が六年前の天明八年、艶本「歌まくら」を描いたとき、女はまだ十五の少女だった。どんな微細な陰も、手にとるように記憶に刻まれている。

 あとがき
 解説 蓬田やすひろ

2012年7月10日 新装版第1刷

[ 2018/06/18 20:00 ] 国内の作家の本 藤沢周平 | TB(-) | CM(0)

「湿地」 アーナルデュル・インドリダソン

「湿地」
著 者 アーナルデュル・インドリダソン
訳 者 柳沢由実子
発行所 創元推理文庫


 北欧アイスランドのミステリー小説。

 アーナルデュル・インドリダソンの出世作。アイスランド警察の犯罪捜査官エーレンデュル・スヴェインソンを主役にしたシリーズの三作目として2000年に刊行され、2002年に国際推理作家協会の北欧支部であるスカンジナヴィア推理作家協会からガラスの鍵賞を授けられた。

 十月の夕暮れどきのレイキャビク、二階建ての石造りの建物、その半地下にあるアパートで七十歳前後の男性の死体が発見された。青いシャツに薄茶のコーデュロイのズボン、スリッパ姿。頭にできた大きな裂傷から血が流れ出て白髪が赤く染まっている。死体の近くに、鋭く尖った角のあるガラスの灰皿が落ちていて、それにも血糊がべったりとついていた。

 ずさんで不器用、典型的なアイスランドの殺人。
 現場に残された意味不明なメッセージ。

 次第に明らかにされていく女性に対する性暴力の加害者としての被害者の過去。

 主人公のエーレンデュルは五十歳。かなり以前に離婚。別れた妻とは二十年以上会っていない。二人の子どもたちは成長してから父親を探し出し、再会を果たしたが、娘は深刻な麻薬中毒、息子はアルコールの問題を抱えていた。

訳者あとがき
文庫版訳者あとがき

解説
灰色の物語――節義と血讐と家族を描くアイスランド生まれの警察小説  川出正樹

2015年5月29日 初版

林 博史 「暴力と差別としての米軍基地」 沖縄と植民地――基地形成史の共通性

「暴力と差別としての米軍基地」 沖縄と植民地――基地形成史の共通性
著 者 林 博史 (はやし ひろふみ)
発行所 かもがわ出版


 米国の安全保障と北朝鮮の体制保証をかけた、それぞれの国の為政者による世紀の政治ショーが終わりました。6月13日の新聞紙上には識者によるさまざまな見解が載せられましたが、今回のショーの本質と日本の為政者の今後の動向に注目しなければなりません。

 毎日新聞(2018年6月13日朝刊)に1月4日以降の日本の為政者、安倍晋三首相の北朝鮮に対する発言がまとめられています。直近のものを抜粋すると、

5月14日 衆院予算委
拉致問題は最終的に日朝で話し合わなければ完全解決できず、あらゆるルートを通じて日本の考え方は北朝鮮に伝えている

6月7日 日米首脳会談後の共同記者会見
拉致問題の早期解決のため、北朝鮮と直接向き合い、話し合いたい。最終的には私と金正恩朝鮮労働党委員長の間で解決しなければならない

 トランプ大統領の主眼は米国の安全保障を確立することであって、拉致問題は二の次であることを忘れてはいけません。今後は日本の為政者の動向に今まで以上に注視することが肝要です。

 本書によると、2012年9月30日現在、海外にある米軍基地は39か国・地域598か所にのぼるという。さらに海外領土であるグアムやプエルトリコなどに97か所、米本国には4364か所があるので、合計5059か所になる。

 国防総省の別のデータによると、2011年9月30日現在、米兵が駐留している国・地域は148か国、20万5118名となっている。

 冷戦構造の解体後も依然として世界に基地ネットワークを展開し続けている米軍の様相を数字で知ることができる。

 それら世界各地に設けられた米軍基地は如何にして作られたのか。沖縄の米軍基地問題について見ていくうえでも、本書は有益な示唆を与えてくれる。

目 次

はじめに

第Ⅰ部 米軍基地建設の植民地主義・人種主義――世界の事例から
1 植民地を利用した基地建設
2 基地に翻弄された自治領の住民たち――プエルトリコ
3 米国領土外にある最も古い基地――グアンタナモ
4 核とミサイルのために犠牲にされた島民たち――マーシャル諸島
5 強制排除された先住民――グリーンランド
6 無人島にさせられた島々――ディエゴガルシア
7 二一世紀の強制収用――韓国ピョンテク
8 刑事裁判権に見る植民地主義・人種主義

第Ⅱ部 沖縄での基地建設――沖縄戦から恒久基地化へ
1 米軍の世界的戦争計画の中の沖縄
2 沖縄戦下の基地建設
3 終戦前後の基地建設計画
4 海軍の沖縄基地計画
5 一九四〇年代末から五〇年代へ
6 核兵器と沖縄
補論 国防とアイヌ

第Ⅲ部 沖縄における米兵による性犯罪
1 日本軍による沖縄女性への性犯罪
2 免罪された米兵による性犯罪
3 米軍占領下の性犯罪と米軍の認識―― 一九四〇年代後半
4 継続する米兵の性犯罪―― 一九五〇年代

終章

あとがき

【参考文献】

 著者が本書によって明らかにしようとした事柄、著者の意図が「はじめに」の箇所で述べられています。

 本書は米軍基地の建設・展開を歴史的に振り返りながらその問題を浮き彫りにしようとする試みである。数十年前の出来事から最近のものまでいろいろな事例を取り上げている。昔のことだから、今とは関係ないと言うことはできない。そのことを反省しない者はまた同じようなことを――形を変えたとしても――繰り返していくからだ。多くの国々への武力介入と侵略を繰り返してきて、それへの反省のない米国と、戦争責任・植民地支配への反省のない日本との同盟が日米同盟である。もし自らが過去におかした加害とおぞましい行為の数々の事実を直視し、二度と繰り返さないと決意して行動しようとするならば、今日のような日米軍事同盟はたちまちのうちに崩れ去るだろう。軍事力に頼らない、人を踏みつけることによって自らの安全を保とうとするような利己的で非人間的な手段には頼らない、平和的な共存と競泳の未来を目指す営みの一つが本書である。(13ページ)

 「終章」では、ソマリア沖の海賊行為から通航する船舶を護衛するという名目で、日本政府が東アフリカのジブチに設置した「活動拠点」について述べられます。

 日本政府は「活動拠点」という言い方をしているが、正真正銘の基地である。日本が戦後初めて海外に基地を建設したことを意味している。また交換公文の第八項により、派遣される自衛隊員たちについての刑事裁判権は日本が有することが規定されて、つまり受入国には刑事裁判権がないということである。日米地位協定やNATO地位協定では、公務中と公務外に分けて、刑事裁判権を派遣国と受入国がそれぞれ有することになっているが、派遣国が全面的に刑事裁判権を持つという植民地主義そのものの規定を日本が得たことになる。刑事裁判権の問題で米兵の犯罪を日本が裁くことができないという大きな問題を抱えていた日本が、今度は他国にその矛盾を押し付ける立場になったのである。(162ページ)

2014年10月25日 第1刷発行

[ 2018/06/14 16:00 ] 政治・経済・現代社会の本 林博史 | TB(-) | CM(0)
スポンサードリンク
スポンサードリンク
スポンサードリンク
Amazon
プロフィール

きどのひつじ

Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
QRコード
QR
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ