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たとふれば猫かもしれず

見たり、読んだり、思ったり。

神器 軍艦「橿原」殺人事件 (上)(下) 奥泉 光

神器 軍艦「橿原」殺人事件 (上)(下)
著 者 奥泉 光 (おくいずみ ひかる)
発行所 新潮社


 語り部から話を聞くような筆致。澱むことのない流れるような文体。読みやすいといえば、これほど読みやすい文章はないのだが、最後まで読み続けるにはかなりの忍耐を要する。

 物語の展開がどうなるのだろうか、と読み進めつつ、ここまで読んだのだから、ここで止めてしまっては元の木阿弥、もったいないとばかりに、いかに結末を迎えるのだろうかと、その一点に希望を求めつつ、ようやく最後まで読み終えることができた。

 敗戦末期、軍艦「橿原」に乗り組んだ兵士たちの数奇な物語。時間と空間を超越した原色の世界。人間と鼠による原色絵巻。著者の語る話の真実性に引き寄せられながら、読者もまた、原色世界に取り込まれてしまう。

 今体験していることは真実か、虚構か。この作品にまっとうな物語性を期待してはいけない。しかし確実に言えることは戦争の本質を描きだしているということ。戦争を幻想性というオブラートで包むことによって、戦争の真実が描かれた。戦争を知らない世代によって描かれた先の大戦。

2009年1月25日 発行



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[ 2019/05/17 20:00 ] 国内の作家の本 奥泉光 | TB(-) | CM(0)

「わが家は祇園の拝み屋さん6 花の知らせと小鈴の落雁」 望月麻衣

「わが家は祇園の拝み屋さん6 花の知らせと小鈴の落雁」
著 者 望月麻衣 (もちづき まい)
発行所 角川文庫


 前世の呪縛というか、現代を生きる物語そのものが煮詰まってしまい、にっちもさっちもいかなくなってしまったという印象のストーリー展開。

 現在を前世の因果物語としてリンクさせようという作者の意図が感じられるのだけれども、それどころか、その意図があからさまに現れるだけに読者としては本書を読み続けることの妙味を削がれてしまう。

 片や、京都のまちに魑魅魍魎が跋扈しはじめたとなると、風水の観点から京都を検証して見なければならず、巻末に載せられた参考文献から、現代の陰陽師をいかに活躍させたら、物語としての面白さを際立たせることができるかという作者の本作に対する熱意を感じることができる。

 五行の相生、五行の相剋が出てきた本書、これがその後の展開にどのように生かされるのか、それを知ることができるかどうかが今後の物語展開の妙味につながると思われる。

 そしてもちろん小春の恋の成り行きもまた。

 五行の相生、五行の相剋は分かるが、『解放』『封印』という記述と『解放』『封印』ということばを用いた160ページの図が理解できない。

 目 次
プロローグ
第一章 抹茶ケーキと、花の有平糖。
第二章 お知らせと小鈴の落雁。
第三章 涙のくずきりとソーダ味。
第四章 水晶の想い。
第五章 神のみぞ知る午後。

2017年9月25日 初版発行

[ 2019/05/13 00:00 ] 国内の作家の本 望月麻衣 | TB(-) | CM(0)

「わが家は祇園の拝み屋さん5 桜月夜と梅花の夢」 望月麻衣

「わが家は祇園の拝み屋さん5 桜月夜と梅花の夢」
著 者 望月麻衣 (もちづき まい)
発行所 角川文庫


 それまで小春が感じることができた特別な力は、失くしたのではなく、誰かに封じられていた。封じたのは三善朔也。そしてまた、手当たり次第に京の妖を祓っている謎の祓い屋の正体もまた朔也だった。

 封印はかけた術師に直接解いてもらうのが一番。

 小春と朔也の対決。

 一方、小春にとっては、はとこに当るモデルとして活躍する杏奈は映画の主演女優に抜擢されたものの事実無根のスキャンダルに襲われてしまう。

 物語は、過去と現在を交錯させながら小春と澪人の恋物語の様相を呈してきた。

 確かに関西では『USJ』ではなく『ユニバ』なのです。

目 次
プロローグ
第一章 梅花の香りと豆大福。
第二章 水中花の涙。
第三章 桜と船出と。
第四章 椿餅とさくらマカロン。

2017年5月25日 初版発行

[ 2019/05/03 01:00 ] 国内の作家の本 望月麻衣 | TB(-) | CM(0)

「炎の色」 ピエール・ルメートル

「炎の色」
著 者 ピエール・ルメートル
訳 者 平岡 敦 (ひらおか あつし)
発行所 早川書房


 ゴンクール賞およびCWA賞インターナショナル・ダガー賞を受賞。

 『天国でまた会おう』三部作の第二巻となってはいるものの、『天国でまた会おう』を読んだのは2016年、今から三年ほど前。どんな内容だったか皆目覚えておらず、本書を読み始めるにあたって、これは困ったもんじゃと思ったものの、すらすらと読み進めることができた。

 本書の主人公マドレーヌが『天国でまた会おう』で登場したエドゥアールと姉と弟という血縁関係があるとはいうものの、それだけのことであって、本書は純粋なマドレーヌの物語、復讐譚。前作のしがらみを引きずることは全くない。

1927年2月、パリ。
一大帝国を築き上げた
実業家が死んだ。
その長女マドレーヌ・ペリクールは、
幼い一人息子ポールとともに、
父の莫大な遺産を受け継いだ。
しかし、事故に遭ったポールの
看護に努める彼女は、
自らを取り囲む悪意に
気づかなかった―――。
やがて裏切られて地位も資産も
失った彼女は、復讐を決意する。

 目 次
1927年 – 1929年
1933年
 謝辞
 訳者あとがき

2018年11月25日 初版発行

「石の来歴 浪漫的な行軍の記録」 奥泉 光

「石の来歴 浪漫的な行軍の記録」
著 者 奥泉 光 (おくいずみ ひかる)
発行所 講談社文芸文庫


 芥川賞受賞作「石の来歴」と「石の来歴」から九年を経て書かれた「浪漫的な行軍の記録」の二作をおさめる。

 戦争を知らない世代によって書かれた戦争文学。

 著者とわたしの年齢差はわずか一歳。著者自身による年譜によると、生まれたのは1956年(昭和31年)の山形県東田川郡。生後まもなく、東京都品川区へ移り住むとあるからには、戦後の余韻とは無縁に育ったと思われるのだが、戦争非体験者にして、あたかも戦場を実体験したかのような書きぶり。

 「石の来歴」の発表が1993年(平成5年)、37歳のときとなれば、なおさらの驚き。思わず当時のわたしを投影しながら本書を読みふけってしまった。戦争体験のあるなしに関わらず文学の持つ底力を意識させられる。

 「石の来歴」からほぼ十年を経て書かれた「浪漫的な行軍の記録」。アジア太平洋戦争末期の南島の戦地に送り込まれた私の日常は上官に命じられるままに行軍することであった。行軍をやめたときに待っているのは死だけという現実。

 総勢140余名の砲兵中隊。全部で四個分隊。中隊に割り当てられた四年式十五糎榴弾砲は二門。うち一門は故障。これを二個分隊が担当し、残りの二個分隊に割り当てられたのはダミーの砲二門。

 ダミーの砲。浪漫主義精神に支えられたリアリズム。分隊内でダミーの砲は「国体の精華」と呼ばれるようになった。

 事実であるなしに関わらず、納得されられてしまう著者によって創作された旧日本軍の実態。限りなく真実に近いと思わせられてしまう。

 巻末に、

著者から読者へ
解説     前田 塁
年譜
著書目録

2009年12月10日 第1刷発行

[ 2019/04/23 16:00 ] 国内の作家の本 奥泉光 | TB(-) | CM(0)

「近代俳人 新訂俳句シリーズ・人と作品19」 沢木欣一編

「近代俳人 新訂俳句シリーズ・人と作品19」
編 者 沢木欣一
発行所 桜楓社


 俎上に載せられる俳人はもちろんのこと、執筆者もまた実力俳人という贅沢な一書。

目 次

近代俳句史概説・・・・・沢木欣一
村上鬼城・・・・・松本 旭
夏目漱石・・・・・熊坂敦子
松瀬青々・・・・沢木欣一
臼田亜浪・・・・・西垣 脩
渡辺水巴・・・・・草間時彦
前田普羅・・・・・中西舗土
原 石鼎・・・・・原  裕
中塚一碧楼・・・・・栗田 靖
室生犀星・・・・・倉橋羊村
久保田万太郎・・・・・安住 敦
杉田久女・・・・・清崎敏郎
芥川龍之介・・・・・村山古郷
高野素十・・・・・上村占魚
栗林一石路・・・・・古沢太穂
橋本多佳子・・・・・上野さち子
日野草城・・・・・桂 信子
秋元不死男・・・・・鷹羽狩行
富沢赤黄男・・・・・高柳重信
芝 不器男・・・・・飴山 実
松本たかし・・・・・森 澄雄
石川桂郎・・・・・細川加賀
篠原 梵・・・・・富田直治
角川源義・・・・・松本 旭
近代俳句年表・・・・・松井利彦

     挿画 佐藤多持

1973年1月25日 初版発行
1993年5月15日 新訂版五版発行

「わが家は祇園の拝み屋さん4 椿の花が落ちるころ」 望月麻衣

「わが家は祇園の拝み屋さん4 椿の花が落ちるころ」
著 者 望月麻衣 (もちづき まい)
発行所 角川文庫


 年末年始くらいは、両親の許に帰らなくてはならないだろうと考えていた小春だったが、両親の方が京都に来ることになり、元日の朝、祇園の櫻井家の居間には、祖母・吉乃、叔父の宗次朗、小春の両親が揃った。

 四日が仕事始めの両親が二日に帰った後の三日、小春は吉乃や宗次朗とともに、澪人の実家である賀茂家の新年会へ行くことになった。

 そこで小春は今まで見てきた不思議な夢の意味を知ることになる。
 小春の前世での名は玉椿。陰陽師の助言によって立てられた『異例の斎王』。

 過去と現在の交錯。

 謎の祓い屋が手当たり次第に京の妖を祓っているという情報を耳にした小春は嫌な予感を覚えていた。祓い屋の正体が不明のまま新学期が始まった。

 小春の前世、左近衛大将の妻となった玉椿は、それまで当たり前のように精霊の気配を感じることができていたのだが、普通の人間になっていた。

 そして、小春もまた、いつも、あちこちで目にしていた、想念が形となったものや、半透明の精霊の姿も何も見えないし、感じなくなっていた。

 「運命の歯車が動き出す第4巻」となっているが、第5巻からの展開は如何に。

目 次
プロローグ
第一章 椿の回顧録。
第二章 課題と業と雪うさぎ。
第三章 水神様と陰陽きんつば。
第四章 椿の花が落ちるころ。

2017年1月25日 初版発行

[ 2019/04/21 20:00 ] 国内の作家の本 望月麻衣 | TB(-) | CM(0)
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きどのひつじ

Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

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