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たとふれば猫かもしれず

見たり、読んだり、思ったり。

「アズミ・ハルコは行方不明」 山内マリコ

「アズミ・ハルコは行方不明」
著 者 山内マリコ
発行所 幻冬舎


 地方に生きる地元在住者たちの青春グラフィティ。

 道の両側には大型店舗が連なり大型の家電量販店の真向かいに別の家電量販店。より遠くのドライバーにも見えるように派手さを追求した看板のオンパレード。モータリゼーション版ぼくらの商店街。

 地元サイコーと言い合って実家暮しに満ち足りる。車選びで個性を表現、休日はショッピングモール。時間が空けばやることなしにパチンコ三昧。

 何か面白いこと、何か面白いこと、と言いながら、面白いことがゴロゴロ転がっているはずもなく、ゴロゴロ悶々、ゴロゴロ悶々。

 田舎町を舞台にした青春群像。

 都会生活者には受け入れられないかもしれないが、地元に生きる者の共感を得ることができるかも、と思ってネットを検索したら「大ヒット中」と映画化されていました。



2013年12月20日 第1刷発行

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[ 2018/09/23 18:00 ] 国内の作家の本 山内マリコ | TB(-) | CM(0)

「猟犬」 ヨルン・リーエル・ホルスト

「猟犬」
著 者 ヨルン・リーエル・ホルスト
訳 者 猪俣和夫 (いのまた かずお)
発行所 早川書房


 ガラスの鍵賞受賞。
 ゴールデン・リボルバー賞受賞。
 マルティン・ベック賞受賞。

 主人公は、ノルウェー、オスロの南西100㎞に位置するラルヴィクの警察署に勤務する捜査官ヴィリアム・ヴィスティング。

 秋の嵐が吹き荒れる日曜日、行きつけのカフェでくつろいでいると、ノルウェー最大のタブロイド紙《ヴェルデンス・ガング》(VG)で記者をしている娘のリーネから電話がかかってきた。

 17年前ヴィスティングが捜査の指揮を執った「セシリア事件」で証拠としたDNA鑑定は警察の捏造で、鑑定にまわされた吸い殻はすり替えられたものだった。そのことが《VG》のスクープとして翌日の朝刊に、父親の写真つきで第一面で大きく報じられるという。

 気が気でないリーネだが、オスロフィヨルドをはさんで対岸に位置するフレドリクスタで殺人事件が起きたとの報を受け、父親の記事を第一面から押しのけられる記事を書けるかもしれないと思い立ち、事件現場へ向けて車を走らせた。

 締め切り時間が迫るなか、リーネは事件現場近くで家宅侵入犯と鉢合わす。

 翌日、署に出勤したヴィスティングを待ち受けていたのは即時停職と査問委員会が喚問するという通告だった。

 思いも寄らない処分に愕然としたヴィスティングだが、リーネに助けられながらひとり真相を追う。しかしそのとき、17歳の少女が金曜日から行方不明という新たな事件が起きていた。17年前と同じように。

 息をもつかせぬ絶妙な展開。スピード感あふれるストーリー。あたかも劇場で映画を見ているかのように錯覚させられてしまう。

 ヴィスティング・シリーズの邦訳は本書だけだが、本作はヴィスティング・シリーズの第8作に当るという。そして2013年に第9作が出ている。

 ヨルン・リーエル・ホルストの他の作品の邦訳が待ち望まれる。

訳者あとがき

2015年2月15日 発行

「7人目の子」 上・下 エーリク・ヴァレア

「7人目の子」 上・下
著 者 エーリク・ヴァレア
訳 者 長谷川 圭 (はせがわ けい)
発行所 早川書房


 〈ガラスの鍵〉賞受賞。

 1961年5月13日、児童養護施設、コングスロン養護院設立25周年記念の日の夜明け直後、何者かが養護施設の階段にひとりの捨て子を置き去りにした。

 置き去りにされた命に、〝醜い〟という言葉以上に適した言葉はなかった。生まれたままの姿を初めて目にした者の驚きを想像するのは難しくない。

 2001年9月11日、スコスボー・ホテルとベルビュー海浜公園のちょうど中間の砂浜で女の死体が見つかった。世界が大きく変わるきっかけとなった大惨事が起こる数時間前のことだった。

 通報があったのは午前6時32分。その女の死体は、顔を砂に押しつけるような格好で波打ち際に横たわっていた。身分証明書などはなく、服装や腕時計から、ニュージーランドまたはオーストラリアからやってきたと推理できた。

 全世界を揺るがすことになったあの大惨事が数時間後に起こっていなければ、この事件の捜査は続けられていただろうが、捜査機関は彼女に関する手がかりを何一つ得ることができず、事件は迷宮入りとなった。

 2008年5月5日、一通の手紙が国務省に届いた。封書から出てきたのは、古い新聞か雑誌2ページ分のコピーと養子縁組申請書。コピーには、巨大な屋敷とクリスマスツリーの下に座ってカメラマンを見つめている7人の子供の写真が掲載されている。

 写真の下には〈〝ゾウのへや〟で生活している7人のこびと――男の子5人と女の子2人――が、新年に新しいおうちが見つかるのを楽しみにしています〉〈実の両親の秘密は厳守。非合法な妊娠中絶にかわる合法的な養子縁組の増加に、私たちは貢献しています〉と書かれていた。

 申請書の項目欄には「ヨーン・ビエルグストラン」という名前。この子は誰の養子になり、なぜこれがここに送られてきたのか。

 1955年生まれの著者は、人生最初の二年間を養護施設で過ごし、その後、祖父母に養子として引き取られた経験を持つ。

 1950年代から60年代にかけて、デンマークではたくさんの子供が施設にあずけられ、養子として新しい両親のもとに引き取られていったという。

 成人した著者はジャーナリストとして調査を開始。そして集めた情報と自分自身の経験をもとにして小説として発表したものが本書である。

 上下二巻。上巻はしばらくの間、読み進めるのに忍耐を要するかもしれないが、上巻後半から下巻全体はあっという間に読み終えることができる。

訳者あとがき

2014年10月25日 発行



「ここは退屈迎えに来て」 山内マリコ

「ここは退屈迎えに来て」
著 者 山内マリコ
発行所 幻冬舎


 ちくま文庫で復刻された源氏鶏太の「青空娘」、その解説を書いていたのが山内マリコ。富山県出身者として、源氏鶏太を絶賛している彼女の解説を読み、初めて知った山内マリコの存在。取りあえず何か読んでみようと読んだ最初の山内作品が本書である。

 巻末の著者紹介によると、

山内マリコ
1980年富山県生まれ。バブル崩壊後の地方都市で、外国映画をレンタルしつづける十代を送る。大阪芸術大学映像学科卒業後、京都でのライター生活を経て上京。2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞するも、本を出せない不遇の時代がつづき、みんなに心配される。本作がやっとやっとのデビュー作!

 地元に住む、とある年代の女性たちが主人公の短篇8作。年代指標となるキーパーソンは椎名一樹。それぞれの作品においては主人公とはなりえないけれども、全編読み通してみると、結果的に椎名くんが主人公だったのかもしれない。噂話の対象としての椎名くん。

1 私たちがすごかった栄光の話
 田舎町を飛び出したはみだし者の女子が、地元に戻ってライターの仕事をはじめた。椎名一樹は自動車教習所の教官、30歳。結婚二年目、一歳になる娘の名は日南多。

2 やがて哀しき女の子
 森繁あかねが結婚した今、山下南には友だちと呼べる人はいないし、彼氏もいないし、好きな人もいない。あかねに紹介されたのは椎名一樹、27歳。自動車教習所の教官。

3 地方都市のタラ・リンピスキー
 就職活動が嫌で大学院に進んだものの、人間関係に嫌気が差して研究室に顔を出すのも億劫になり、博士論文を書きあぐねているゆうこがハマったのはネットワーク型のクイズゲーム。偶然視線が合った男性店員は椎名一樹だった。椎名、弱冠25歳にして店長だが、人員削減で社員は一人。年中無休のブラック企業。椎名は自動車学校から内定をもらった。

4 君がどこにも行けないのは車持ってないから
 バイトを終えてコンビニから出たあたしを待っていたのは遠藤だった。椎名の友だちが遠藤。椎名は大阪へ行って地元にはいない。椎名がいなくなって遠藤しか残っていなかった。あたしは、ごろりと仰向けになって天井の鏡に映る自分の姿を眺めた。不幸な23歳。

5 アメリカ人とリセエンヌ
 フェリーでしか本土に行けない離島出身のわたしが進学した大阪の大学は梅田からも心斎橋からもはるかに離れた山奥にあった。姉妹校であるテキサスのカレッジから一年間の交換留学生としてやって来たブレンダが、わたしと行ったクラブで出会ったのが椎名だった。

6 東京、二十歳。
 朝子の家庭教師がまなみ先生だった。高校受験が終わったあとも、まなみ先生に教わりたいと、朝子は週一回まなみ先生のもとへ通った。朝子の兄が椎名一樹。末はJリーガーか日本代表かと一家の希望の星だった一樹はサッカーをやめ、ぷらぷら遊び回り、車を乗り回してパチスロに通っていた。

7 ローファー娘は体なんか売らない
 学校指定のハルタのローファーを履いている女子の彼氏は38歳。今度お見合いをして、うまくいけばその人とつき合って、結婚するという。彼女が赤信号で立ち止まると、彼女のとなりに自転車が滑り込んできた。教室で話したことはないが、同じクラスの椎名くんだった。高校名の入った巨大なスポーツバッグを斜めがけしている。

8 十六歳はセックスの齢
 あたしと薫ちゃんの興味の対象はセックスのこと。中学のときに片思いでいっぱいだった頭の中は今、性欲で満たされている。「カッコよかったなぁ、椎名くん」薫ちゃんが唐突に、遠い目でつぶやいた。

 地元に住む、あるいは他郷に住みながらも結局、地元回帰した人々の地元での哀歓が著者の出身地富山の風土を背景として描かれる。個々の物語はもちろん、それぞれの物語の行間に読みとることができる椎名君の人生の哀歓もまた。現在から過去へ遡るという手法が心憎い。

2012年8月25日 第1刷発行

[ 2018/09/17 19:00 ] 国内の作家の本 山内マリコ | TB(-) | CM(0)

「夏に凍える舟」 ヨハン・テオリン

「夏に凍える舟」
著 者 ヨハン・テオリン
訳 者 三角和代 (みすみ かずよ)
発行所 早川書房


 スウェーデンのエーランド島を舞台にした四部作シリーズの最終作。

 元船長のイエルロフ・ダーヴィドソンは八十四歳。
 自らの衰えと確実に近づきつつある死を意識しながら探偵役を務める。

 1930年夏、イエルロフは墓掘り人ローランド・ベントソンを手伝った。その時に出会った年下の少年アーロン。アーロンは義理の父に〈あたらしい国〉に連れていかれ、そこで過酷な体験をすることになるのだが、この時点では、そんなことになろうとはアーロン自身思ってもいなかった。

 1999年初夏、イエルロフは八十四歳。ヨンは来年八十歳になる。ふたりは船長と一等航海士として三十年近く、嵐の日も凪のときも、バルト海でともに貨物船を走らせてきた。今日は月曜日、夏至祭の週。漁村から休暇を楽しむリゾート地へと変わったステンヴィークは、そろそろ活気づきはじめていた。

 〈帰ってきた男〉は鳥や魚を獲る男の小さな家の戸口に立っていた。狭く暗い部屋は血と汗のにおいがする。帰ってきた男の名前はアーロン。アーロンの〈あたらしい国〉への旅は1931年のある晴れた夏の日に始まった。

 ヨーナスは父ニクラス、兄マッツとともに、伯父ケント・クロスの運転するコルヴェットの後部座席にいた。到着したのはクロス一族がエーランド島で経営する夏の別荘ヴィラ・クロス。

 ある夜、ボートでひとり海にこぎだしたヨーナスの目の前に、幽霊船が現われる。やっとのことで陸に戻ったヨーナスはイエルロフのボートハウスの扉をたたいた。少年から話を聞いたイエルロフの好奇心がうずきはじめた。

 物語は、イエルロフを含む複数の登場人物が視点人物を務め、それぞれのパートが交互して進行する。〈帰ってきた男〉とリゾート経営者であるクロス一族の関係が物語の読みどころ。

 ヨシフ・スターリンの恐怖政治、大量逮捕、即時処刑を背景としながら物語は進行する。この恐怖はソビエト市民とソビエト連邦が労働者の楽園だと信じて西側から渡った移民を直撃した。その移民のひとりがエーランド島出身者だったことに本作品の着想を得たと著者は書く。

解説 酒井貞道

2016年3月15日 発行

[ 2018/09/17 01:00 ] 海外の作家の本 ヨハン・テオリン | TB(-) | CM(0)

「最高殊勲夫人」 源氏鶏太

「最高殊勲夫人」
著 者 源氏鶏太
発行所 ちくま文庫


 今から60年前、1958年8月2日号から1959年2月8日号まで「週刊明星」に連載され、1959年2月に講談社より刊行された作品が「ちくま文庫」として復刻されました。

 1958年といえば、私が3歳の頃の作品ながら、違和感なくどきどきしながら読んでしまった。ということは、私自身が古い世代に属する人間だということか。

 野々宮林太郎、杉子夫妻には桃子、梨子、杏子、楢雄の一男三女がいる。桃子は、三年前に、三原商事の社長、三原一郎と結婚した。そして、今日は、梨子の結婚式。梨子は、三原一郎の弟で、三原商事の専務取締役をしている次郎と結婚する。

 三原家は、一郎、次郎、三郎の三兄弟。

 野々宮家の三姉妹と三原家の三兄弟のうち、それぞれ上のふたりどうしが結婚。三原商事の社長夫人である桃子は、末の妹、杏子を三原三郎と結婚させようと画策しはじめた。

 三郎は、三原商事に入ると、一生、兄貴たちにこきつかわれるから嫌だといって、大島商事に勤めている。月給二万三千円で、目下、総務課長代理。梨子の結婚式の仲人をしてくれた大島商事の社長、大島光三の言によると、三郎はなかなか前途有望であるという。

 三郎を三原商事に引き戻すことができたなら、三原商事の基礎は盤石となり、ますます発展させることができるに違いない。

 桃子の思惑、一郎の思惑。

 桃子の思惑に載せられまいと、杏子は三郎と協力して、この話が実現しないように奔走する。それぞれに別の結婚話が動き出すころ、いつしか、ふたりはお互いに惹かれあっていることに気づいてしまう。

 高度経済成長前夜の昭和の時代に執筆されたノンストップ・ラブコメディー。平成の代はまもまく終了。昭和は遠くなりにけり。

解説 千野帽子(ちの ぼうし)

2016年9月10日 第1刷発行

[ 2018/09/15 02:00 ] 国内の作家の本 源氏鶏太 | TB(-) | CM(0)

「青空娘」 源氏鶏太

「青空娘」
著 者 源氏鶏太
発行所 ちくま文庫


 今から約60年前、1956年7月から1957年11月まで「明星」に連載され、1966年5月に講談社より刊行された作品が「ちくま文庫」として復刻されました。

 私がまだ生まれたばかりの頃の作品とはいえ、古びない内容、夢中で読んでしまった。

 瀬戸内海の見える田舎町で、両親と離れて祖父母と暮らす小野有子が出生の秘密を知ったのは三年前、有子が高等学校へ入学して間もなく、おばあさんが病気になったときだった。

 東京のお母さんは、本当の有子のお母さんではないという。本当のお母さんは三村町子といい、お父さんの会社の事務員をしていたという。その後、町子は結婚して満州へ渡ったのだが、引揚げて来たかどうかもわからない。

 おばあさんが一月に亡くなり、有子は町の高校を卒業した。

 葬式が終わってから、今後のおじいさんと有子のことが問題になった。有子は今のまま、この町にいたいと主張したのだが、七十八歳の老人を、十九歳の高校生にまかせておけるものではないと父が主張し、見知らぬ土地東京で暮らすことになる。

 継母とその子どもたちからのいじめ、手がかりの少ない実母の行方探しなど幾多の困難にぶつかるが、けなげに真っ直ぐ生きる有子に手を差しのべてくれる人々が現れ、運命は好転していく。

 シンデレラの物語をモチーフとして描かれたかのような希望にあふれた物語。青空を見て励まされたり、元気をもらったりすることのできる、素直で真っ直ぐ、清い心の持ち主、有子が主人公の物語。

解説 山内マリコ

2016年2月10日 第1刷発行



[ 2018/09/13 21:00 ] 国内の作家の本 源氏鶏太 | TB(-) | CM(0)
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きどのひつじ

Author:きどのひつじ
散歩すると猫に会う。
いつもの場所にいつもの猫がいるのだが、人間とは付かず離れずの関係を保ちつつ生きているように思われる。

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